いきものがかりと大滝詠一の新アルバムから、JPOPと歌謡曲の“洋楽アプローチ”を再考

 俎上に載せたいのは、今週3位、大滝詠一の『DEBUT AGAIN』。今は亡き彼が、多くの歌手に提供してきた歌謡曲のセルフカバー。人知れず残されていたマスターテープの発見が今回のリリースに繋がりました。

 小林旭の「熱き心に」。小泉今日子の「怪盗ルビイ」。松田聖子の「風立ちぬ」。薬師丸ひろ子の「探偵物語」。さらには吉田美奈子に始まりラッツ・アンド・スターなど多くのアーティストが歌ってきた「夢で逢えたら」。すべては大滝詠一が残した名曲中の名曲です。もちろん「熱き心に」は演歌として売れたし、「風立ちぬ」はアイドル歌謡として愛されましたが、ここでのセルフカバーはどうでしょう。自分の声に合うようキィを変え、大胆にアレンジを変更し、一人多重録音のコーラスを加えた「大滝セルフ・バージョン」は、もうなんというか、とろけるアメリカン・ポップス黄金期の曲がそのまま日本語に訳されて響いているような刺激と感動。一部の歌謡曲とは、まさに洋楽と本気で格闘してきたマニアックな音楽家によって作り上げたもの。そんな事実を改めて突きつけられました。J-POPと、歌謡曲における、洋楽エッセンスの割合。そんなことを考えさせられる今週のチャートでした。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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