Chocolat & Akitoが語る新作誕生の背景と、聴き手の意識変化「折衷的な音楽が受け入れられつつある」

ショコラ&アキトが語る“J-POP”の変化

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「自由なリズムの中の音楽ってこんなにイキイキしてるんだ」(片寄)

――今作は演奏部分だけをとっても、マットソン2の単独のアルバムとは違う音になってますね。

片寄:違いますね。今まで彼らが出してきたものはトーマスのプロデュースで、しっかりした方向性があるものなんです。それが今回はトーマスから離れて、マットソン2がやりたいことを自由に追求したものなんですね。トーマスとではできなかったことで試したいことがたくさんあったんだろうな、というのは、一緒にレコーディングしていて感じました。プロデューサー的な視点では、今まで彼ら自身のアルバムでは表現できていなかったけど、絶対にできるであろう面白い部分があるってわかってたんで、そこを自由に引き出してあげることができたかなと思ってるし。

――ああ、ショコラ&アキトがマットソン2をプロデュースした面もある。

片寄:ジョンのミックス含め、最終的な音の質感に関してはみんなの総意でできあがったものだけど、トータルの部分ではある意味そうだと思いますね。

――もとのマットソン2の演奏はもっとベーシックなジャズっぽいものだったんですか?

片寄:いや~~~なんだろう…

ショコラ:荒い…

片寄:そう、荒いんだよね。いい加減とは言わないけど(笑)。

ショコラ:2人だけでいつも成り立っちゃってるから。双子だし。ラフなんだけど息がぴったりなんです。そこに私たちが入っていくのがけっこう大変だったんだけど。

片寄:僕とジョンで最終的にある程度洗練させたところはありますね。

――まさにその「洗練」というところがマットソン2の単独アルバムとは違う部分ですね。だからこれを聴いて気に入った人がマットソン2の単独アルバムを聴いて満足できるかといえば、必ずしもそうではないかもしれない。

ショコラ:ああ~~~

片寄:別物かもしれないですね。

――アルバムにはトミー・ゲレロも参加してますね。

片寄:トミー・ゲレロは呼んでもいないのに毎日スタジオに来てくれて(笑)。下のスタジオが彼の作業場なんでしょっちゅう来ては、いろいろアイディアを出してくれたんですよ。これはリズム・ボックスを入れたほうがいいとか。彼もすごく洗練されたアイディアを持ってる人だと思いましたね。

――今作の音の質感とか、ちょっとトミー・ゲレロに似てるところもありますね。

ショコラ:うんうん。

片寄:トミー・ゲレロはファースト・アルバムが出た時からずっと好きだったから。大ファンですね。1曲ベースを弾きたいって言ってくれて。お金ないから頼めないよ、って話をしたんだけど(笑)。

ショコラ:サンドイッチでいいよって言ってくれて(笑)。

――じゃあジョン・マッケンタイアのミックスも含め、おふたりのディレクションは、マットソン2のサウンドを洗練させる方向で。

片寄:そうですね。よりポップにしていく、という。それはメロディの書き方という意味でもそうなんですけど。1曲目(「Graveyard Has No Color」)とかね、たぶんこれに歌を乗っけるという発想を(ほかの人は)あまりしないと思うんですけど、でもうまく乗っけたら、こういうものでもポップに聴かせられるんじゃないか、というのは自分の中に青写真があって。それがうまくハマったのが今回収録されてる曲ですね。

――彼らから送ってくるトラックは今まで自分たちが作ってきたものとはまったく違う発想、公式でくるわけですね。

片寄:そうです。コード進行も違うし。GREAT3もそうなんですけど、自分にとってはどうしても手癖のコード進行、好きなコード進行があるんで。それとはまったく違う公式に対して自分のメロディ・メイキングのセンスをぶつけるって作業はすごく刺激的だった。自分としても開けたというか、こんなことも自分はできるのかって彼らに教えてもらったところはあります。

――なので今作はこれまでのショコラ&アキトのアルバムとも、また違うものになってますね。

片寄:前のアルバムとは全然違うかもしれないね。僕なんかはわりと頭でメロディを考えて煮詰まっちゃいそうなところを、ショコラが本能で突拍子もないメロディをつけてきて、そういうのが突破口になったり。僕ってデモテープをしっかり作りそうなイメージに思われてるけど、実はそういうことはほとんどやらない。むしろ人とのコラボレーションの中で音楽を作っていく方が好きなタイプなんです。GREAT3でもショコラ&アキトでも、誰かと一緒に作業をするのが好きで。自分1人の頭の中で完成できるものって、あまり興味がない。そういった意味ではこうして引き出してくれる、素材を与えてくれるマットソン2と出会えたのはすごく面白かったし、刺激的な経験でした。

――具体的には、ご自分のどういう新しい面が引き出されましたか。

片寄:(マットソン2のトラックは)コードの数としてはむしろ少なくてシンプルなんですよ。自分がふだん作っているポップスよりもシンプルで、繰り返しの多い構造のトラックに、キャッチーなメロディを書く、という作業だった。それは3コードのロックンロールやブルースの形式でキャッチーなメロディを書く作業に似ていて、いつかしてみたいと思っていたことなんです。でも自分はすぐ転調してみたり、洒落たコードを忍ばせてしまったりする。そういうものを好きだからついやってしまうんですけど、じゃなくてある意味プリミティヴなものの中に強いメロディを書くってことが、今回ある程度できたのかなと。そこは新しい面じゃないかと思うんだけど。

――ショコラさんはマットソン2のトラックにメロディをつける作業はどうでしたか。

ショコラ:楽しかったです(笑)! 自分では考えつかないコードが送られてくるので、そこの制限がある中でメロディを書けたのは楽しかったし、すごく自然にできた。無理してない感じでできたから、相性が良かったのかなと思ってますけど。

――今回アレンジの洗練度がきわめて高いんですが、特にヴォーカル・アレンジの完成度が素晴らしいですね。

片寄:それは完全に自分たちだけでやりましたね。マットソン2のトラックに対してどういうハーモニーをぶつけていったら、これがポップに化けるかな、ということは一生懸命考えて。

――特に苦労された点などは。

片寄:日本のミュージシャンはほとんどクリックを聞きながら演奏するんですよ。あとでダビングが楽なんで。でも彼らは絶対使わない。おまけに双子なんで、どっちかが走っても瞬時に追いついて、同時に走ったり同時に遅くなったりを平気でする(笑)。演奏に僕らがあまり混ざらなかったのはそういう理由もあるんですけど。でも歌では混ざらなきゃいけない。なので歌入れはリズムの部分でけっこう大変でしたね。

ショコラ:思ったより大変だった。

片寄:明らかにAメロの中でテンポが変わってたりする中で違和感を感じさせずうまくハメていくのは、それはそれはシビアな作業でしたね(笑)。

ショコラ:面白かったけどね(笑)。ジョンがそれを違和感ないバランスでうまくまとめてくれて。

片寄:そうそう。でも自分たちとしても新鮮な作業でしたね。ふだんはクリックの中で音楽を作ってきたけど、自由なリズムの中の音楽ってこんなにイキイキしてるんだって、改めて発見しましたね。

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