小林武史はなぜミスチル曲にストリングスを導入?「ボーカルのメロディーに対するカウンター」

生音の楽園

 2つ目のキーワードである「生音の楽園」について、亀田は「この年代はアコースティック楽器を印象的に使った楽曲が数多く登場した時代でもあった」とし、平井堅「瞳を閉じて」(ストリングス)、森山直太朗「さくら(独唱)」(ピアノ)、RIP SLYME「One」(ギター)、Mr.Children「Sign」(ストリングス)を例に挙げた。2000年代を亀田は「人肌の体温を感じるアコースティックの生音志向に変わっていった」と説明し、続けて「この時代からJ-POPのあらゆる曲でストリングスが使われるようになってきた」と述べた。

 ここで、J-POPにストリングスサウンドを定着させた第一人者である音楽プロデューサー・小林武史がVTRに登場。小林は「Mr.Childrenという強い音を出すバンドに対して、バンドのグルーヴをさらに後ろから押し上げる。そういうことが生のストリングスって有効なんです」と話し、続けて「ピアノでもポーンと弾いたら『後悔先に立たず』というかその音に変更のしようがない。ストリングスはそのポイントから(付け足せる)表現なので、魂とか感情を後から押していくっていう感覚があった」と述べた。亀田からストリングスに求めるものを聞かれた小林は、主旋律に対するカウンターとして機能するラインの役割だと挙げ「ボーカルが歌うメロディーに対してカウンターを当てることによって、切なさや開放感をもっと押し出すことができる」と話し、番組では例としてMr.Children「終わりなき旅」を紹介。小林がMr.Childrenで行ったバンドアレンジにストリングスをぶつけるといった手法は、「楽曲の良さ」「アーティストの魅力」「聴く人の心を揺さぶる」といった様々な効果を生んだ発明品だと亀田が述べ、続けて「日本人ってどこかロックで『切ないが前に行くよ』っていうのが好き。心をギュって掴むみたいに、切ないが気持ちいいみたいな。(ストリングスは)民族としての郷愁感がある」と語った。

 VTR終了後、亀田は「ストリングスは日本人の心をとらえる『万能だし』である」とまとめ、最後にRIP SLYME「SLY」を亀田とストリングスを交えパフォーマンス。番組最後に、RYO-Zは「僕らの曲を聴いて、いま日本語ラップをしている子たちもいるんですよ。異常ですよ。どうやって作っているのか全く分からない。リズム感の進化がすごくて」と音楽シーンの変化について述べ、番組は終了した。

 「リズム」と「ストリングス」が2000年代に浸透した経緯が明らかになった今回の放送。次回の放送は最終回となり星野源、秋元康をゲストに迎え『J-POPの現在 そして未来』をオンエアする予定だ。

(文=向原康太)

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