UQIYOが新作『Black Box』で再定義する“音楽の価値”「便利なものもパーソナルに響かせる」

UQIYOが再定義する“音楽の価値”

――Phantaoさんから「女性ボーカルで聞きたかった」という言葉もありましたが、今回2曲入って、新しい個性が出たという気がしました。

Phantao:そうですよね。8曲のうち2曲入っていると、聴く人も“おお!”ってなると思います。これまで出せていなかったいい面を出せたんじゃないかなって。

Yuqi:いろんな意味で幅が広がったと思います。目指すはジブリというか、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、老若男女に楽しんでもらえるものを作ることなので。あと、僕の声が女性ボーカルとうまく混じる、ということも気づきでした。

Sima:キュートな部分もありつつ、「Saturn」とか、「Blue Blur Beach」とかは、わりかし尖っている印象だったり。

――確かに、「Blue Blur Beach」などはギターが前に出ていて、また違うアプローチになっていますね。機材として新しく取り入れているものもあるのでしょうか?

Yuqi:そうですね。音作りでいちばん大きかったのは、BOSSのSY300っていうギターシンセ。このアルバムで使いまくっているんですけど、昔だとありえなかったようなCPUスピードが実現可能になって、出せなかった音が出せているんです。ジム・オルークもハマっていてたくさん使って試している最中らしいですね。

Phantao:僕はROTH BART BARONの音圧に衝撃を受けたこともあって、サンプラーやミキサーをいいものに換えたりと、地道に機材を更新しています。多分、半年前くらいからライブに来ていない人が観たら、別バンドに感じるほどだと思いますよ。最近観てない、という人はぜひライブに来てください(笑)。

Sima:ドラムについては、年末に新しいシンバルを買いました。人力エレクトロニカ・ユニット=マーヴのドラマー、ジョジョ・メイヤーがデザインした『Sabian/HHX-19OMX OMNI』で、シンセサイザーのような音で、かつ生の広がりもあるんです。タイトな音も出るし、ちゃんとクラッシュもする。「Saturn」がすごく楽になりますね(笑)。

Yuqi:機材周りでこんなに苦労しているのはなぜかというと、僕らって同期(トラックのデータをそのまま流す)を使っていないんですよ。多分、日本のエレクトロなバンドのなかで、いちばん生演奏をしていると思うんですよね。

Phantao:だから失敗も少なくなくて。玄人的な作業は、小さいカフェだとすごく伝わるんですけど、大きい会場だとサンプリングだかなんだか分からなくなる、というジレンマもあって。あと、大きい会場でいうと、Micro KORGをベース用にひとつ取り入れました。

――今回の収録曲で言うと、『news every.』(日本テレビ系)のお天気コーナーで流れている「Aero」も話題です。これはどんなイメージで作った曲ですか?

Yuqi:パリのちょっとしたカフェで、おしゃれな朝食を……みたいな雰囲気をイメージしました。清楚感、清潔感が出たので、それがコーナーにハマったんですよね。もともとある楽曲を使ってもらった、という順番なんですけど、コーナー用に作ったんじゃないか、と思うくらい(笑)。このアルバムにハマるかどうか迷ったんですけど、コース料理で途中に入ってくる箸休めのシャーベットみたいな感じになったかなと。

――確かに、1枚通して聴いたときに起伏があって、この曲の清涼感もすごく新鮮に聴こえます。12月にライブで発表された、新ブランド「OTOGi」の立ち上げも気になります。こちらはファッションアイテムを中心に展開するということでしょうか?

Yuqi:そうですね。ファッションがメインで、小物もあって。『Black Box』のコンセプトからすべてつながったストーリーになっていて、“着る音楽”ということで「OTOGi」(音着)というブランド名をつけました。そして『Black Box』の限定特別版を作るんです。実は1曲ごとに幾何学模様のモチーフをつけていて、そのワッペンを入れたいなと。そして、これまで使われたことがない新しい素材の黒い紙で箱を作って、「触って、開ける」ということ自体がメチャクチャいい体験になるようにしようと思っていて。値段は少し高くなるかもしれないけれど、その価値があるものを作りたいんです。

――まさに、今回お話してもらった意味での“Black Box”の中に入れたくなるような、リスナーのお気に入りになりそうな作品ですね。4月以降にはまたツアーが控えていますが、今作をライブでどう再現していこうと考えていますか?

Yuqi:特に「Ship's」は、ガンガンやっていきたい曲なんですけど。なにぶん、ちとせさんが忙しく、すべてのライブにお呼びできるわけじゃないので、アレンジの部分でこれから試行錯誤していきます。ギターシンセだったり、声周りのエフェクターも新しくしているので、聴きどころは多くなっていると思いますよ。

Sima:まあ、いかに難しいことでも、涼しい顔でやりたいなって。(笑)

Phantao:アルバムの制作はYuqiの比重がものすごく高いんですけど、ライブは完全に別ものというか、それ用に作りたいと考えています。やっぱりCDを聴いて来てくれるわけですから、「ライブの方が全然いいじゃん!」と思ってもらえるのが理想ですよね。

――「OTOGi」にもつながることかもしれませんが、リスナーとの関係性をより深いものにしていく、というイメージでしょうか。

Yuqi:そうですね。リスナーの人たちの日常を、いい意味で非日常にしたい、という思いがあるんです。いわゆるファンクラブも自分たちで運営していて、コンテンツも全部作っているから、けっこう好評いただいているんですよ。ただ“ファンで応援している”という感覚じゃなくて、“パトロン”みたいな感覚で自分が育てているバンドが、有名になっていくストーリーを楽しんでもらいたいですね。これが続いていけば何かに繋がるかもしれないと思うので、このままがんばりたいですね。

(取材・構成=編集部)

■商品情報
『Black Box』
発売:2015年1月20日(水)
価格:CD ¥1,667+税(税込\1,800)

<収録内容>
M1.Saturn
M2.Ship’s feat.元ちとせ
M3.Lost in Wonderland feat.酒井景都
M4.Blue Blur Beach
M5.Aero ※日本テレビ系「news every.」お天気コーナーテーマソング
M6.Juvenile Dreams
M7.Blood Fest at Tiffany's
M8.1 -plumule-

<先着購入者特典>
TOWER RECORDS:缶バッジ+QRコードシートセット (タワーレコードver)
HMV:缶バッジ+QRコードシートセット (HMV ver)
ヴィレッジヴァンガード:缶バッジ+QRコードシートセット (ヴィレッジヴァンガード ver)
※一部取扱いのない店舗もあり。詳細は店舗へ要問合せ。
※特典はなくなり次第終了。

『Black Box(特別版)』
※公式Web Store & Live会場限定販売
価格:¥21,000
初回限定15セット(予定)
1月19日正午より随時メールにて予約開始(先着順)
詳細はこちら http://uqiyo.com/news/blackboxspecial01/

■インストアライブ情報
『UQiYO「Black Box」発売記念 インストアイベント』
・HMV&BOOKS TOKYO(東京・渋谷)
日時:2016年2月12日(金)19:00スタート
場所: HMV&BOOKS TOKYO 7Fイベントスペース
内容:ミニライブ&特典引換会
対象店舗:HMV&BOOKS TOKYO
参加方法:観覧フリー。予約者優先で対象店舗にて『Black Box』購入者に先着で特典引換券を配布。イベント当日、特典引換券を所持していた場合、会場にて特典をメンバーからプレゼント。

・TOWER RECORDS新宿店(東京・新宿)
日時:2016年3月13日(日)21:00 スタート
場所:TOWER RECORDS新宿店 7Fイベントスペース
内容:ミニライブ&特典引換+サイン会(特典:未定)
対象店舗:TOWER RECORDS新宿店、渋谷店、池袋店、横浜ビブレ店、川崎店、浦和店、町田店、
参加方法:観覧フリー。予約者優先で対象店舗にて『Black Box』購入者に先着で特典券を配布。イベント当日、特典引換券を所持していた場合、会場にて特典と商品へのサインをメンバーからプレゼント。

■ツアー情報
『2016 Tour OTOGi vol.1』
2016年4月16日(土) 名古屋 K・Dハポン
2016年4月17日(日) 大阪 細野ビルヂング
2016年4月23,24日(土,日) 東京 Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE

■関連リンク
HP
note
Facebook

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる