アイドル楽曲の“キャッチーさ”はどう生まれる? AKB48G、ハロプロ、でんぱ組.incなど手掛ける人気作家・板垣祐介が解説

板垣祐介が語る、“切ないサウンドの核”

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ハロプロの楽曲は“キメ”が多い

――板垣さんの楽曲は、疾走感のある曲でもバラードでも、キャッチーな部分の裏側に、必ずセンチメンタルな要素があると思っていて、ミスチルやスピッツと聞いて納得できました。駆け上がり方は気持ちいいけれど、切ないというか。

板垣:なるほど、鋭い指摘です(笑)。彼らの楽曲は間違いなく影響していると思いますし、センチメンタルさに関しては、若干意識して作っている部分がありますね。明るいイメージのものでも、ちょっと心にグッとくるフレーズを意識して作っています。

――なるほど。アイドルやアニソン、劇伴など多ジャンルの楽曲に携わっていますが、各ジャンルでそれぞれ気を付けていることは?

板垣:アイドルやアニメ系は、とにかくキャッチーで派手にして、“絵が見える”ようなサウンド、物語が伝わるようなメロディーを意識しています。言葉にするのは難しいのですが、メロディにしても音色にしても、リスナーが曲を聴いて情景を浮かべてくれるように、と自分の中ではいつも考えているんです。

――板垣さん自身が考える“キャッチー感”とは、どういうものなのでしょうか。

板垣:簡単に言ってしまうと、歌がヘタな僕でもカラオケで歌えるかどうか、みたいなことです。加えて、明るい曲調だったら、聴いていてワクワクできるかどうか。僕はサビをいちばん大事にしていて、そこから曲を作ることが多いのですが、サビでワクワクできたら、そこにつながるBメロもワクワクできるよう作って、さらにAメロでもワクワクできるように……という風に作っていくんです。結果として、「Aメロがサビでもいいよね!」と言ってもらえるものを目指しているというか。欲張りなんですね(笑)。

――板垣さんのキャリアを振り返ると、2010年代に入ってから急激にアイドルの楽曲が多くなっています。

板垣:そうですね。これに関しては、ハロー!プロジェクト楽曲のアレンジを手掛けたことが大きいと思います。この時期にハロプロ向けのアレンジコンペに参加し、その時は不採用で終わったのですが、別の案件でアレンジ仕事をいただけるようになり、そこから彼女たちの作品を手掛けることが増えてきました。

――ハロプロと一括りに言っても、グループごとにカラーも違いますし、難しいことも多かったのではないでしょうか。

板垣:アイドルソングはジャンルの幅も広くて、やるたびに勉強になります。アレンジの修正に関しても、それぞれのアイドルに合わせて「キメをこうしてほしい」「歌に合わせてくれ」という独特のオーダーがあったりして、やるたびにスキルアップしている実感がありました。

――つんく♂さんが作った楽曲を何度もアレンジすることで、メロディーの作り方などに影響した部分はありますか?

板垣:ありますね。具体的にどの部分というわけではないのですが、アイドルソングにおけるメロディーの作り方は吸収したつもりですし、以降のアイドル楽曲コンペでの結果をみると、それがしっかり反映できていたのだと思います。あと、この時期からアイドルブームが来たことも、アイドル楽曲の仕事が増えた要因ですし、自分にとってはタイミングのいい出来事でした。

――ちなみに、ハロプロの楽曲における特徴を言語化すると、どのようなものが多いのでしょう。

板垣:“キメ”が多いというイメージですね。歌のリズムに合わせて周りの楽器のリズムを合わせたりするのはどのアイドルでもやることだと思うのですが、ハロプロ系の場合はとくにその頻度が高く、メリハリがしっかりついているように感じます。僕自身も、作るときはキメを多くするように意識していますね。

【後編】「独りよがりという意味ではなく、自分に対して責任を持てるかどうか」 板垣祐介が明かす、楽曲制作のコツ

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■開催情報
Music Factory Tokyo presents『Music Creators Workshop』
場所:テレビ朝日ミュージック 本社屋
開場13:30 / 開講14:00
料金:1講義3,500円、2講義7,000円
公式サイト:http://musicfactorytokyo.com/
<開催概要>
開催日:2016年1月23日(土)
「キャッチーな曲のヒミツ教えます!~王道歌謡曲の作曲テクニック~」
講師:板垣祐介
ナビゲーター:多田慎也

開催日:2016年2月27日(土)
「原曲の良さを100倍生かすアレンジ術」
講師:生田真心
ナビゲーター:多田慎也

<板垣祐介プロフィール>
ギターリスト活動と並行し、2006年頃から作曲家、編曲家として活動を開始。
POPROCKからBossa、Acoustic soulなどギターを軸としたアレンジを得意とする。
また、Production I.G制作のアニメ「チョコレートアンダーグラウンド
のサウンドプロデュースを担当するなど、ジャンルを問わない幅広い活動をみせている。
主な参加作品としては、AKB48、いきものがかり、CHEMISTRY、Hey!Say!Jump、ハロープロジェクト関連など。

<生田真心プロフィール>
1990年代後半、大阪で映像音楽制作を開始。同時期、BOREDOMS/想い出波止場/OOIOO 等のトラックメイクやライブ制作のサポートを行う。 2004年、活動の拠点を東京に移し「生田真心」をスタート。AKB48「フライングゲット」をはじめとするAKB48関連シングル・ジャニーズ関連シングル等のアイドル作品の編曲を多く手掛ける。多くのヒット曲に携わり、2011年には年間編曲家ランキングで1位を獲得する。アイドル、J-POP、アコースティック、R&B、どのジャンルでもその楽曲のポテンシャルを最大限に引き出すクリエーター。

<多田慎也>
幼少よりピアノをはじめ、高校時代に作詞、作曲を始める。ボーカリスト、コンポーザーとしての地道なライブ活動を経て、2007年「嵐」のシングルのカップリング曲「いつまでも」で作曲家デビュー。以来、作詞・作曲家としてのキャリアを重ねる一方で、2009年には「タダシンヤ」としてシンガーソングライターとしても活動を開始する。2011年自身の歌う「優しいヒーロー」がNHKみんなのうた でO.A、2012年には作曲を担当したAKB48の「ポニーテールとシュシュ」でJASRAC賞銀賞を受賞するなど、多方面にわたって活躍する今後も期待のマルチクリエーター。

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