Acid Black Cherryが武道館公演で融合してみせた、不変のエンタメ性と『L-エル-』の世界

Acid Black Cherry、日本武道館公演レポ

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 「君がいない あの日から…」からライブは再開。yasuのヴォーカルの力強さと、それをしっかりと支えるサポートメンバーのタイトなサウンドは、まさにベテランたちの底力をしっかりと感じさせるものだった。そして「7 colors」では、それまでのダークな世界観から一転、ポップで明るい雰囲気が会場を包んでいく。

 2回目の質問コーナーを挟み、ライブ終盤はまさに怒濤の展開に。「お前らこんなもんじゃねえだろ!!もっと声だしていくぞー!!」というyasuの叫びとともに「ピストル」、「少女の祈り」が立て続けに披露され、ひたすら続くヘドバンと熱気で武道館はカオス状態。「coad name【JUSTICE】」では炎がステージを取り囲み、本編ラストナンバーの「エストエム」で大熱狂のうちに本編は終了した。

 鳴り止まないアンコールに応え登場したメンバー。ミラーボールで美しく会場が照らされる中披露されたのは「L-エル-」。さらにカラフルなカラーテープが飛び、温かな空気が包んだ「& you」のあと、一度はステージを後にしたメンバーたちだったが、その後もABCを呼ぶオーディエンスの声に応え、再度ステージに登場。「一枚のアルバムでこんなに長いツアーを廻れることはとても幸せ」とyasuはこの一年を振り返り、「この年になるまで音楽ができていると思っていなかった。僕がもっと年をとったとき、このアルバムとツアーを思い出して色々感じるんじゃないかと思う」と感慨深げに語った。さらに一人の女性の人生を描いた『L-エル-』というアルバムになぞらえ、「人生のピークを決めるのは自分次第。愛されることを諦めずに、夢があるなら頑張ってほしい」と、yasuはオーディエンスにエールを送ってくれた。その後は「少女の祈りⅢ」、「SPELL MAGIC」、と、ABCの代名詞とも言うべきヘドバン必至のキラーチューンが続き、「20+∞Century Boys」で大団円のうちにライブは終了した。

 一枚のコンセプトアルバムを丁寧に表現するということと、これまでのABCらしさを失わないこと。このツアー、ひいてはファイナルであるこの日の公演には、そういった高いハードルが課せられていたのではないかと思う。しかしyasuは見事にそのふたつを融合させることに成功していた。それはサポートメンバーを含めた演奏力やパフォーマンススキル、そしてyasuの何よりもオーディエンスを楽しませたいという、エンターテイナーとしての変わらない姿勢があってこそなのだろう。このツアーの横浜アリーナ公演の音源化、そして並行して行われた、数百人規模のレアなライブハウスツアーの映像化、そして武道館公演の映像化が決定している以外、来年以降の活動予定はまだ発表になっていないが、2016年もまた、ABCはシーンを最前線で走り続けてくれるはずだ。

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(文=岡野里衣子)

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