HKT48と氣志團のコラボはなぜ絵になるのか “建前の突破”と“キャラクター性”から考える

 「2つのグループがステージ上で並び立つ」とさらっと書いたが、ここで立ち止まって考えたいのは「男性との接触を制限されている女性アイドルが男性ロックバンドと共演していて、それについて取り立てて誰もなんとも思っていなさそう」ということである。特に今回の曲のPVには指原莉乃と綾小路翔のキスシーンまであるが、それすら『ミュージックステーション』においてはトークのネタとして処理されていた。“恋愛禁止”が金科玉条となっている昨今のアイドルシーンの流れで考えるとなかなか奇妙な状況である。

 ここについては“恋愛禁止”という「建前」を自らの実績(および自らの失敗)で形骸化させた指原莉乃の立ち位置によるところが大きいが、綾小路翔があくまでも「ヤンキーというものを戯画的に演じているキャラクターとしての存在」であることも重要なポイントである。たとえばこれがフェスシーンの真ん中にいるような若手ロックバンドとのコラボであれば、もっと大きな「騒ぎ」になっていたかもしれない。

 「恋愛禁止という建前の突破」と「女性アイドルとキャラクターとしての男性アーティストの絡み」。この2つの構造は、「一夫多妻制」を標榜してステージ上でいちゃいちゃしまくる清竜人25のあり方と実は一致している。奇しくも先日の「指原カイワイズ」に出演していた清竜人25に対して、指原は「絶対に人気が出ると思う」「今日でファンになった」とコメントしていた。「しぇからしか!」が昨年末からアイドルシーンを賑わせているコンセプトのトレースになっているのは偶然だろうか、それとも…。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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