ななみが最新作&路上ツアーを経て考えたこと「昔の自分に喝を入れられてる気がした」

ななみが新作を経て気付いた“初期衝動”

「女性側からの『愛してる』って、母親的な愛になっちゃうような気がして」

ーー立ち入った話になるんですが、これは今のあなたの実感? それとも過去を回想してるもの?

ななみ:過去を回想してますね。このアルバムで唯一、救いのない曲なんですよ。<あの日確かに僕は 笑っていた>……これで終わりで、今に残されてるものがない状況を書いてるんです。自分の曲ってドラマチックにして出口を作っちゃうんですけど、この曲に関しては「この先はみなさんの想像力にお任せします」という映画みたいな終わり方ですね。

ーーそういう作り方をしてみたかったんですか?

ななみ:いや、たぶんこの家族の感情に関しては、ゴールがないだろうなと思ったから。それには自分が新しく家族を作るしかないと思う。誰かと結婚して家族を作るまで、出口はないと思いますね。

ーーそうですか。でもさっきのお父さんに会いたかったこともですけど、こういう欠落感があなたを歌に向かわせているようですね。

ななみ:そうですね。ほんと感謝です、離婚してくれて。

ーー(笑)感謝という言葉はどうかと思いますけど。

ななみ:いや、でも親に言いますよ。大分に帰って、みんなでご飯食べてる時に「ほんとに離婚してくれてありがとう」って言ったら、ふたりとも笑ってます。「やろ?」「わざとわざと」みたいな。「こんな娘になるとわかって離婚したんよ」みたいな冗談が言える仲なので、全然いいですね。でも離婚を現在経験しているようなさっきの娘さんは、今はそんなふうに思わないでしょうけどね。まだ。

ーーそうですね。あと、このアルバムでもわりと多いんですが、ななみさんの歌って主語が<僕>だったり、主人公が男性目線だったりしますよね。こういう書き方をするのはなぜなんですか?

ななみ:なんか……男性側からの女性に対しての「愛してる」って、すごい好きなんですよ。女性側からの「愛してる」って、母親的な愛になっちゃうような気がして。

ーー母性的な?

ななみ:そう、母性的な。でも男性の「君のこと、ほんとに愛してるんだ」って……せつないじゃないですか。精一杯な、不器用な感じが伝わってきて。あと、男性のほうがたぶん過去を気にするじゃないですか。だから自然とここは<僕>になりましたね。「ここは少年じゃないと悲しくない」とか「<私>だったら違う」とか。でも<僕>であろうと<私>であろうと、私は自分のことを唄ってる気持ちにはなりますね。つねに。

ーー聴いていても、これは決して男側ではなく、ななみさんの気持ちだとわかります。で、このあとの「孤独を埋める方法」も今年書いた曲なんですね。

ななみ:これはスクランブル交差点でパッと浮かんできました。Aメロがその通りじゃないですか? いろんな人がいる。で、目に見える人をただ書いてるんです。寝転んでる人がいたり、酔っぱらってるなあ、着飾ってるなあ、ギャルいるなあ……とか、そういう感じで見てて。でも前までは自分もその中のひとりだったんですよ。呑み明かしたり、寝転んだり、怒ったり、泣いてたり……。

ーー(笑)そんな面倒くさい人だったんですね。

ななみ:してたんですけど(笑)。でも、すでに自分はそれを違うところから見て、「この人たちの孤独を埋めてあげたい」って思うようになってたんですよね。それで曲を書こうと思ったんです。

ーーそこで、その人たちの孤独感を察知したわけですね。

ななみ:そうですね。ただ「孤独なんだな」って。自分も孤独だったから、わかるから。助けてあげたいなあ……って思うようになってたことにビックリしました。自分で。

ーーそれは以前話してもらった、愛を唄うことで聴く人の心を救いたいという気持ちと近いですね。

ななみ:そうですね、うん。なので、「ノイズ」のあとにこの曲が来ているのにも意味があります。出口をちゃんと次の曲で作ってあげるっていう(笑)。

ーーこの曲の途中では「ABCの歌」のメロディも入れてますね。

ななみ:ここはオマージュというか、みんながわかりやすいメロディを、と思って。曲のコードの続きを弾いてたら「大サビはこれだな」って感じで、自然と浮かんできました。通行人A、B、Cとか、アルファベットをいろんな人にたとえて、複数形にしたかったのもありますね。

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