スガ シカオは新作『THE LAST』で何を表現する? 柴那典がアルバム制作ノートなどから探る

スガ シカオ、『THE LAST』の片鱗

 番組『プロフェッショナル〜』の中では、また別の収録曲の歌詞を苦闘しながら書き上げる様も描かれていた。「真夜中の虹」と名付けられた、末期癌と闘う友人のミュージシャンに捧げるべく作られた一曲。

 番組では、スガは「人がいるとええ格好しいの歌詞になるから」と撮影スタッフに告げ、その後、歌詞を書く場面では固定カメラのみの撮影となる。iPadと紙とペンを併用し、Pro Toolsで曲を再生し書いた言葉を一行ずつ歌ってマイクに吹き込みながら、ピッタリくる言葉を探していく。

〈サヨナラさえ言わなきゃ お別れからずっと逃げ切れるかな ぼくのナメクジ色の心を 現実はメッタ切りにした〉

 「真夜中の虹」ではこんな風に歌われる。何度も書き直し、死に直面した友人に対して何も言えなかった自分の弱さと深く向き合い、それでも届けたい思いを探り、歌詞は仕上げられていた。

 また、「アルバム制作ノート」によると、6月頃に「アルバムの核になる曲が一つできた」とある。「自分のルーツを崩さず、しかもフェスや他流試合に向いていて、サウンドも破壊的な仕掛けがしやすいという、絶対狙っては作れないであろう神バランスの曲」で「ゴスペルのアゲアゲな雰囲気とEDMを混ぜた感じ」だという。小林武史もデモを聴いて最初に反応したというこの曲が、いわばリード曲的な役割を果たすことになっていくのではないだろうか。

 デビュー以来、J-POPのメインストリームに濃厚なファンクを根付かせ、情景から感情を深く抉り取る日本語の歌詞世界と共に、独自の音楽世界を描き続けてきたスガ シカオ。考えてみれば、ここ数年はディアンジェロ、マーク・ロンソン、ファレル・ウィリアムスなど、ファンクをルーツに持つブラックミュージックが世界的なポップ・ミュージックの一大潮流として広まってきた時代でもある。彼も当然そういう動きに刺激を受けてきた。新作のサウンドは、そういった海外との同時代性も反映されているはずだ。

 一切の妥協なく、自らのルーツに忠実に、そして最新の音楽シーンの潮流とも同時代性を保ち、持ち味であるエグ味や毒も剥き出しにしつつ――それを極上のポップスとして成立させる。そんな高いハードルを課し、結果的には自らの“生き様”をそのままエンターテイメントに結晶化したような一枚。

 『THE LAST』はそんな金字塔となる予感がする。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

■リリース情報
スガ シカオ
10th Full Album『THE LAST』
発売:2016年1月20日
【完全生産限定盤】
CD(通常盤)+特典CD+DVD+GOODS ¥8000(税抜)

【初回限定盤】
CD(通常盤)+特典CD ¥3800(税抜)

【通常盤】
CD ¥3000(税抜)
<収録曲>
「ふるえる手」、「アストライド」(ソニー損保 CMソング)を含む全11曲を収録予定


■ライブ情報
SUGA SHIKAO LIVE TOUR 2015 『THE LAST』
12月8日(火)大阪・Zepp Namba~生ライブ試聴会&ACOUSTIC NIGHT~
12月9日(水)大阪・Zepp Namba~生ライブ試聴会&FUNK PARTY~
12月22日(火)福岡・DRUM LOGOS~生ライブ試聴会&FUNK PARTY~
12月25日(金)東京・Zepp DiverCity TOKYO~生ライブ試聴会&ACOUSTIC NIGHT~
12月26日(土) 東京・Zepp DiverCity TOKYO~生ライブ試聴会&FUNK PARTY~

■関連リンク
アルバム『THE LAST』特設サイト
http://www.jvcmusic.co.jp/sugashikao/
SUGA SHIKAO TOTAL INFO
http://www.sugashikao.jp/

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