大野雄二✕プロデューサー浄園祐が語る、『ルパン三世』と音楽の深い関係「音楽が印象に残るアニメという点では、ルパンがいちばん強い」

『ルパン三世』と音楽の深い関係

「絵と、声と、音楽がこんなに“三位一体”のアニメはない」(浄園)

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――浄園さんは今回、大野さんが作り上げた音源にどんな印象を受けましたか?

浄園: フィルムをあらかじめ観ていただいた甲斐があったな、と思いました。今回はそんなに大きなリクエストはしていないんです。つまり、いつものルパンを作ろう、ということで、単純にロケーションがイタリアになっただけなので。
 これはお客さんも一緒だと思うんですけど、ルパンを作っていて一番、鳥肌が立つのって、ダビングで大野さんの曲がフィルムにハマった瞬間なんですよ。何十回ルパンを作っていても、いまだにゾワッとします。自分的にも報われる瞬間ですね。いまテレビシリーズで、新しい曲をこんなに作っていただくことはなかなかできない。大野さんは偉大な作曲家ですが、同時に、同じ舞台の上でひとつのモノを作る仲間だと思って接しています。ルパン役の声優・栗田貫一さんをはじめ、役者のみなさんもそうですが、今回はチームとしての一体感がよく出ましたね。毎週放送があることで、栗田さんを座長としてグッとまとまったというか。
 この間は、目黒BLUES ALLEYでの大野さんのライブに栗田さんと一緒に行きましたし、峰不二子役の沢城みゆきさんも「行きたい」と言っていて。絵と、声と、音楽がこんなに“三位一体”のアニメはないと思います。そして、作画がいい、監督がいいというアニメは数多くありますが、音楽でこれだけ引っ張っていける作品はない。音楽が印象に残るアニメという点では、ルパンがいちばん強いと思っているんです。

――大野さんは今回、250曲ぐらい作られたと聞きます。

浄園: 僕らの発注の5倍ですよ。普通は50曲くらいで、そんなに頼んだら怒られます。

――大野さんもそれだけ駆り立てられるものがあったと?

大野: 絵があるからね。

浄園: そこも大きいんですよ。毎週、事前にお渡ししていました。多分、レコーディング期間はもっと短いはずだったと思うんですけど、僕が毎週送るから、大野さんもそれを観て毎回作ってくださったんです。ルパンは原作ものですが、アニメのストーリーはオリジナルを制作しています。今回も毎回お話が違って、次の話から見た人でもちゃんと楽しめるようになってもいます。逆にいうとそこが音楽泣かせで、音楽的にも話数があったわけですよ。それを全部どんどん作ってくださったので、すごくありがたかったですね。

大野: 「また同じ曲が使われちゃうんだろうな」というのが、嫌だったんだ。一つの曲があったら、そのバリエーションを沢山作っときたいんだよね。楽しいシーンとか、アクションとか、シチュエーションに合わせて、選曲する人が使いやすいようにやってあげようと思うから、すごく短い曲も作りたくなるし、あっという間に200曲という感じ。

浄園: ふつう、アニメの音楽の発注はざっくりしてるんですよ。キャラクターのテーマ曲、あとはそのコメディ要素1番、2番……と。けれど、大野さんは「1話のここのカット用」と、完全に絵に合わせた音楽を作ってくださる。その指示書きを見て、音響監督の清水洋史さんもギョッとしていました(笑)。映画でもこんなことはないです。

――新キャラクター・レベッカの曲も充実しています。

大野: レベッカのイメージで音楽を作っているうちに、Aを作ったらBも作りたくなって、B’も……と。

浄園: これもいっさい、発注していません(笑)。

大野: レベッカの曲を佐々木詩織ちゃんに歌ってもらったんだけど、これは本当に偶然から生まれたもので。6月のLupintic Fiveの北海道ツアーに、佐々木久美・詩織の母娘、TIGERの3人組の「不二子ちゃんズ」がコーラスで出演していて。ところが、TIGERが桑田(佳祐)くんのコンサートで1日ダメになって、そこで、インストで演奏していた「ラヴ・スコール」を詩織ちゃんに急遽歌ってもらったんだ。その後、アニメの絵をもらって、1話からレベッカが大活躍しているのを観て、詩織ちゃんとイメージが重なったんだよね。

浄園: レベッカが喋っている映像がイマジネーションを掻き立てたのかもしれないですね。レベッカ役の藤井ゆきよさんは僕が推したんですけど、東北新社はもっと有名な声優さんを当ててきたんですよ。それに比べると、藤井さんは正直、拙いところがある。でも、今後の伸びしろ感と粗さが、不二子と差別化する上でもピッタリで。

大野: その声を聞いたから、詩織ちゃんに行き着いたのかもしれないね。ちょっと未熟なところがすごくフィットしたんだ。

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