2010年前後メジャーデビュー組の今ーーTHE BAWDIESのニューシングルを基点に考える

 一方で冒頭でも触れたthe telephonesの活動休止という、10年前後メジャーデビュー、結成10年を迎えるバンドの一つの象徴的な出来事がある。ジャンル的にはルーツライクなR&Rやソウルを追求してオリジナルに消化したTHE BAWDIESと、当初はポストパンクを主に「ロックミュージックでも自由に踊れるんだぜ」的な表現を海外インディーと並走するように表現してきたthe telephones。ともに「自分たちの音楽を入口にして、もっとその先にある音楽に出会ってほしい」という、それまでのバンドマンが思ってはいても表立って発言しなかったことをライブのMCでもインタビューでも表明してきたのがこの2バンドだ。

 しかしthe telephonesはすでにメジャーデビューアルバムにして実質の2ndアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」(2009年)で、ある種、自分たちの役割としての完成形を作り上げてしまったようにも感じる。バンド自身は作品を重ねるごとに進行形の海外インディをオリジナルに消化した楽曲を収録してきたし、フェスでの集客力も場を盛り上げる力量も、その後のバンドたちが
追随するようなパワーを確実に持っていた。しかし彼らを入口にファンをそちらのフィールドへ連れて行くことができたと言えるだろうかというと、残念ながらバンドの志が叶えられたとは言いがたい。フェスで発揮される力量は後輩世代のバンドに受け継がれ、本人たちの意思の外側で(もはや死語になりつつあるが)“フェス・ロック”なるワードも生み出された。かつ多様な洋楽(使いながらもしっくりこないワードだが)に触れる日常的な環境やヒット作が減少したことも、the telephonesが当初持っていた目標に、逡巡が入り込んだ理由なのかもしれない。

 それにしても11月4日にリリースされるトリビュートアルバムに集結した盟友、THE BAWDIESや9mm、先輩、POLYSICSやストレイテナー、後輩、Yogee New Waves(彼らがカバーした「Odoru〜朝が来ても〜」の共時性ったらない!)というバランスの良さと豪華さが泣ける。カバーのニュアンスもアーティストのカラーが炸裂していたり、思い切りthe telephonesに寄せていたり…バンドマンの愛を一身に受けてきた彼らのスタンスが浮き彫りになっている。

 2010年前後にメジャーデビューし、ライブを主戦場にし、ライブブームとフェスブームのど真ん中にいた(実際、現在もいる)バンドにとって、2015年はひとつの分水嶺になるだろう。これからもさまざまなトピックを追っていきたいと思う。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Skream!」「NEXUS」「EMTG music」「ナタリー」などで執筆。
音楽以外にも著名人のテーマ切りインタビューの編集や取材も行う。

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