つんく♂『だから、生きる。』が語るものーー愛すべき人柄と音楽家としての矜持を読む

ハロプロ総合プロデューサーからの卒業

 本書の発売と同時に飛び込んできたのは「ハロー!プロジェクトの総合プロデューサーからの卒業」というニュースである。ファンにとっては薄々感じていたことでもあったが、実際にこうした事実を現実として突きつけられるのは非常に寂しいことである。オフィシャルとしての発表も本人からのコメントがあったわけでもなく、事後報告として本書に書かれている。「ハロプロ=つんく♂」というイメージはファンのみならず、世間からもあっただろう。それほどのことなのにあっさりとした卒業に戸惑ったファンも多いのではないだろうか。だが、声帯摘出の報告だって、自分の母校の入学式を選ぶ人なのだから、いかにも“らしい”勇退劇ではないか。

 「東京の父親」と慕うアップフロントグループの会長から、休養を奨められたというのが2013年の秋だという。思えば、2013年5月19日に日比谷野外音楽堂で行われた<Hello! Project 野音プレミアムLIVE ~外フェス~>において、ステージに現れたつんく♂が、各グループへのダメ出しをしながら、「そして俺!今日も喉ガラガラになってます」と、自分にもダメ出ししていた姿を思い出す。

 「2014年8月2日 Berryz工房プロデューサー つんく♂」と記された、Berryz工房無期限活動停止発表におけるコメントが、実質的に、“ハロプロ総合プロデューサー”としての最後のオフィシャルコメントになった。そして、翌2015年1月21日リリースの『完熟 Berryz工房 The Final Completion Box』がジャケットに「Produced by つんく♂」表記のある最後の作品である。Berryz工房は誕生から活動停止まで、“ハロプロ総合プロデューサー・つんく♂”とともにできたグループだった。そう思うと、2014年11月12日リリースのラストシングル『永久の歌』に込められた意も感慨深い。

「忘れないあの日の歌」に色んな意味を感じてしまう

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