NMB48の13thシングルに見る、“選抜”の意味合いの変化 梅田彩佳の選出にも注目

 もう一点、今回の選抜が果たす機能をあげておくと、梅田彩佳の選出にみえる、中堅・ベテランメンバーの活路の開拓だ。48グループはもともとその手広さから、アイドルの稼働年数をのばすチャンスが多く用意されているところではある。北原里英のNGT48移籍に代表されるような、姉妹グループへの移籍による新たな存在感の獲得はその主たるものだし、梅田もまたそうした移籍の経験者だ。キャリアを重ねたメンバーがグループの認知度の一助として、また精神的支柱としての役割を期待されることは多い。しかし「Must be now」という少人数曲で選抜メンバーに選ばれることで、梅田はベテランに託されやすい縁の下の力持ち的な役割だけでなく、実際に形式としてもフロントに立つことになる。48グループが大小のチャンスを数多く用意する場所であるとしても、やはり次代を託される新進メンバーの抜擢に目が向きがちではある。ダンスを武器に年数を重ねてきたメンバーが、はっきりコンセプトを決めた少数選抜で脚光を浴びることの意義は、この先の48グループのメンバーにとっても重要であるように思う。

 楽しみなのは、今回の選抜による表題曲がメディアで披露される時、どこまでインパクトを残せるかという点だ。これまでの表題と大きく違う切り取り方をしたことで、対外的に新鮮な印象を突きつけることができるのか。それが叶うとすれば、さらなるグループの切り出し方のアイデアはいかに考えられるのか。グループ内のダイナミクスがポジティブな方面に向かいやすい、勢いのあるグループだからこそ、今回の攻めの一手やその先の展開に期待するところは大きい。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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