浜崎あゆみの“攻め”はどんな結果を生むか? 一連のリリースラッシュから考察

 オリジナル全11曲中4曲のコンポーザーに小室哲哉を招集し、今や浜崎あゆみのライブにおいても超重要な位置を占めている「Movin’on without you」のカバー(初出は昨年の宇多田ヒカルのトリビュートアルバム『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-』)まで収録した、今年4月リリースのオリジナルアルバム『A ONE』。そもそも、その『A ONE』自体が一作前のオリジナルアルバム『Colours』から9カ月しか経ってなかったにもかかわらず、そこからさらにたった4カ月というインターバルでリリースされたのが今回のミニアルバム『sixxxxxx』ということになる。実に約1年でフルアルバム2枚とミニアルバム1枚。このハイペースぶりは、「売れなくなった超ビッグネーム」としては異例、というか前例がないもの。しかも、『A ONE』、『sixxxxxx』と、ここにきて作品のクオリティーも、作中における彼女の歌のコンディションも確実に上向いてきている。

 そんなハイペースのリリースと比例するかのように、ここにきてアリーナツアーに続いてファンクラブツアーと、ライブ活動もいつになく精力的におこなっている浜崎あゆみ。まるで「逆ギレ状態」と言ってもいい現在の浜崎あゆみを支えているのは、彼女自身の最近の言葉を踏まえるなら「ファンとの絆の再確認」ということなのだろうが、もっと言うなら彼女自身の資質にある「根性主義」によるものだと自分は思っている。1999年から2010年、「浜崎あゆみの時代」は正確に12年間続いた。「あと一歩って どれだけカッコ悪くって 笑われたって諦めない」(「Step by step」)。女王の座を守り続けた長い年月が終わり、重たい荷物をいろいろ降ろして、泥臭くも丸腰で一歩一歩「攻め」に転じている現在の浜崎あゆみ。最近自分は、彼女の本名が濱﨑“歩”であったことをよく思い出している。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「ワールドサッカーダイジェスト」ほかで批評/コラム/対談を連載中。今冬、新潮新書より初の単著を上梓予定。Twitter

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