モンスターコンピ『IN YA MELLOW TONE』のセールスなぜ安定? 多角的な発信方法を読む

IN YA MELLOW TONE TOUR digest

 先述の『Nスタ』で、寿福氏は「10年前だったら絶対考えられなかったけど、ユーザーの顔が見えるし、このコアなお客さんからさらに新しい顧客に広めていってもらえる。そういう形を作れるのが一番のメリットではないか」と語っている。それを補足するかのように『IN YA MELLOW TONE 11』では、アイディアをネット上で提案し、賛同者を集めるクラウドファンディングが実施され、選ばれた20名のファンは『選曲会』に参加。作品に携わることでファンもスポークスマンの役割を担い、ネットや周囲のコミュニティに波及させているのかもしれない。

 さらに、同シリーズの支持は、ライブでの展開が後押ししているようにも思える。『Nスタ』でも、東京でのライブに海外や地方から観客が来ていることが伝えられていた。同レーベルは奇数月隔月で恵比寿のBATICAという小箱でオールナイト・イベントを行っているほか、年に数回は『IN YA MELLOW TONE TOUR』と題し、海外からゲストを招聘直近だと、クラウド・ファンディングサイト『CHEERS!』の協力で、サム・オックが大阪・宮崎・名古屋・札幌・仙台でのツアーを成功させている。これらの施策は、コンピレーションにありがちな“リリースするだけ”という価値観を転倒させ、ファンの熱量を持続させている要因といえるだろう。

 ネット・店頭での効果的なリリースと熱量を持続させるためのライブで、着々と売り上げを伸ばしつつある同コンピレーション。CD不況の時代において、この勢いがどこまで加速するのか、注意深く見届けたい。

(文=中村拓海)

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