V6、20周年ベスト盤に求められたものは? セールスから見えたグループの価値

 そしてベテラン勢のベストの話。まだまだ売れ続けているドリカムのベストを押さえ、今週1位はV6の『SUPER Very best』(初回生産限定A盤)だ。過去に発表した全45曲のシングルをまとめたパッケージなので、初動152,490枚という数字が「順当」なのかよくわからない。4週前に1位だったキスマイが初動30万枚だったことを思えば「微妙」とも言えるが、それでも新作ではないシングル集なのだから、うん、やっぱり「凄い」のだろう。

 いまやV6は、全員で歌って踊っている姿よりも、バラエティで「司会」イノッチを見たりドラマで「俳優」岡田准一を見ることのほうが多いグループだ。各自の活動が充実しているのだろうし、それはそれで幸せな話。2001年のベスト『very best』のジャケを見ると、金髪の森田剛を筆頭に、それぞれが「ちょい悪ストリート感」の元にまとまっているのだが、当時のV6のイメージは、もはやほとんど皆無だろう。イノッチとか、リーダーとか、特に。

 おや、と思ったのは今年5月に発表された「Timeless」。ダークスーツに身を包んだ6人がシックに踊るミディアムバラードで、これはデビュー20周年突入の第一弾シングル。いまやキャラクターも活躍場所も散らばっているV6が、「20周年」の名の下、改めてグループとしてひとつにまとまっている。しかもそこには随分オトナっぽい色気が加わっている。今回のアニバーサリーで見せたいのは(あるいはファンが見たいのは)、きっと、そういう部分なのだと思う。

 ベストの初回限定には2種類あって、B盤にはレディ・ガガの仕事で知られるRedOne提供の新曲があるが、ランクインしたのはそちらではない。作詞・V6、作曲・井ノ原快彦による新曲「〜此処から〜」が収録されたA盤がとにかく売れているようだ。作詞という6人の共同作業。行間に滲み出る6人だけの会話。20年を振り返りオトナになった自分たちを確認しあい、またここから始まると歌う曲が、ファンにとってどれだけの価値を持つかは想像に難くない。この一曲が付くだけで15万枚売れるのがV6。うん、凄い。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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