BABYMETALが“元洋楽少年”を熱狂させる理由【海外篇】 市川哲史が海外ファンの反応を分析

 昭和の時代から、海外進出なんてずっと<愛すべきホラ>だった。演歌だって歌謡曲だってロックだって、「FC主催ツアーの出し物」として公演してたようなものだ。それでもバンドブーム以降、日本でもようやくロックバンドが世間で認知されるに至り、個性的なバンド群が海外ライヴを自発的に行なうようになった。

 あ、Xの《移住して改名して米メジャーと契約して世界進出記者会見@米国NYロックフェラーセンタービルまで華々しく開いたけど、結局何もしなかったよ》エピソードは、積極的に無視しておく。

 90年代前半、私はそんなバンドたちの海外武者修行によく同行した。ブランキー・ジェット・シティやミッシェル・ガン・エレファントはロンドン各地、“ギミチョコ!!”作者のTAKESHIが在籍したマッド・カプセル・マーケッツはサンフランシスコと記憶している。

 ハコ自体はライヴハウスやクラブと小規模ながら、ブランキーやミッシェルの轟音はまだグランジ前夜の英キッズには相当新鮮だったようだし、マッドのデジパンクっぷりは当時革新的すぎたらしく、共演した地元の学生プロレスラーや腕にカタカナで「デビルマン」と刺青した漫画オタたちが、興奮しきりだった。

 ちなみにロンドン郊外のパブでライヴを披露したザ・プライベーツは、彼らの童顔がよほど珍しかったのだろう店の中年常連客たちから、「日本から来た子供がストーンズを演ってるよ!」とえらく感心されたのであった。

 話が大きく逸れてしまったが、ロック/ポップ・ミュージックの本家である海外において日本の最も有効なお礼参りの手段は、この黎明期から一貫して<彼らが体験したことがない表現>を魅せつけることに他ならない。

 いまやX JAPANとLUNA SEAを掛け持ちするにまで至った<飛んで火に入り悦ぶ変な虫>SUGIZOと、V系が実は00年代以降、<visualkei>として海外で評価と人気を集めている理由を分析したことがある。

 V系とは洋楽ロックへの過剰な愛情が、メタルにハードコアにパンクにデスにゴスにプログレなど、自分が恰好よいと思ったサウンドを片っ端から取り込んで再構築させる、優秀なリスナー王国・日本ならではの雑食性の産物だ。視覚面も含め、まさに<足し算の論理>である。そのリスナーズ・カルチャーが、ずっと送り手側だったはずの海外リスナーに歓迎されたのだから、まさに歴史的な立場逆転だと言える。

「だからすごく感慨深いです。黒人音楽の影響はマイルス・デイヴィスやプリンスから散々受けてきたし、デヴィッド・ボウイやジャパンといった英国のロマンティック面にも憧れた。それで大人になってミュージシャンになってるわけじゃない?」

「で、ずーっと勉強や追求をしてきてふと一周したら、今度は俺たちが影響を受けた国の奴らが、俺たちに影響を受けて人生変わってきてるわけで。音楽の精神的なリレーションシップのバトンを渡すじゃないけど、そういう輪廻にぐっときますね」

「面白いのは、V系に影響を受けて大きくなってきたバンドが海外で増えてきてるんですよ。X JAPANの北米ツアーの前座の子たちもそうでしたし(嬉笑)」

 SUGIZOの個人的感慨を待つまでもなく、海外のファンがV系を愛する理由は、世界中どこを探してもない日本オリジナルのスタイルだからだ。

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