木村カエラが行き来するロックとポップの両極 ライブハウスツアーで見せた最新モードとは?

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 ライブ後半では、改めてその楽曲のクオリティの高さを実感させるセットリストに突入。木村カエラの楽曲は、メロディラインのキャッチーさ、カラフルでポップなサウンド、伸びやかでポジティブな響きを持ったボーカルなどに耳を奪われがちであるが、アレンジや構成もまた凝っている。後半で披露された「one more」や「Yellow」「TREE CLIMBERS」などは、そうした木村カエラのエッジーな側面が垣間見える楽曲で、彼女がこの10年間、ポップアイコンとしてだけではなく、熱心な音楽リスナーにも支持されてきた理由が伺える作品たちだろう。本編最後には『MIETA』より、疾走感溢れるロックアンセム「TODAY IS A NEW DAY」を高らかに歌い上げ、ステージを去った。

 アンコールで再びステージに戻った木村カエラは、9月2日にニューシングルをリリースすることを発表。「タイトルはまだ決まっていません。歌詞を書いております」と語り、さらに9月9日に渋谷公会堂にて購入者特典のフリーライブを開催することも告げると、ファンから大きな歓声があがった。そして、ライブの定番曲「You bet!!」「Magic Music」で再び会場を熱気に包む。バンドメンバーとともに挨拶をした後は、木村カエラがひとりでステージに残り、アルバム表題曲である「MIETA」を披露。「たとえばこの音で一年が過ぎる」というナレーションから幕を開ける同曲は、□□□の三浦康嗣との共作で、大胆なサンプリングを多用した実験的な楽曲だ。まるで歌劇を観ているようなステージングは、ポップアイコン・木村カエラの次なるフィールドを期待させるものだった。

 木村カエラは、同アルバムをリリースした際のリアルサウンドのインタビューで「ロックとポップの境目が見えたこともあって、それをもっと突き詰めていきたい、私にしかできないことがあった、ということで、この先の自分が楽しみになりましたね」と語っていた。ライブハウスの熱狂の中でロックとポップの両極を同時に見せ、オーディエンスとの化学反応の果てに演劇的な世界観までも展開した今回のライブ。モッシュを巻き起こすパワフルさがありながら、ポップでどこか不思議なステージングは、たしかに木村カエラにしかできない表現だったのではないだろうか。

 なお、同ツアーはこの後、6月23日に下北沢Shelterでファイナルを迎える予定だ。

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(文=松田広宣/撮影=ミヨシツカサ)

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