高田漣が教えてくれる、高田渡の音楽的豊かさーー父子の絆を感じさせるアルバム2枚を聴く

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高田漣

 高田漣は、Yellow Magic Orchestraのライヴ・サポートをしたり、メンバーの関連作品にも参加したりと、シーンで大活躍しているマルチ弦楽器奏者だ。その高田漣による高田渡のトリビュート・アルバム『コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜』は、まず声質の違いに驚くことになった。父親に比べるとかなりソフトなヴォーカルなのだ。

 そしてサウンド面でも大胆な解釈を展開している。「フィッシング・オン・サンデー」はアコースティック・ギターによる弾き語りで、ブルースのような渋い味わいへと変貌している。ここでの演奏のニュアンスの豊かさ、複雑さには唸った。「コーヒーブルース」もストレートなカヴァーのようだが、原曲以上にブルースだ。「ブラザー軒」も弦の響きの寂寥感が歌を浮き立たせ、原曲とまるで違う味わいになっている。「生活の柄」での繊細な弦楽器のアレンジは、まさにマルチ弦楽器奏者である高田漣らしい。「おなじみの短い手紙」での揺らぐかのようなギターは、マルチ弦楽器奏者としての真骨頂。高田漣のヴォーカルの魅力をも引き出している。

 また、『イキテル・ソング〜オールタイム・ベスト〜』には収録されていない高田渡の楽曲のカヴァーも「コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜」には複数あり、そのなかでも最後に収録されている「くつが一足あったなら」は7分にも及ぶ。『イキテル・ソング〜オールタイム・ベスト〜』の選曲がサウンドを重視しているとするなら、『コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜』の選曲は「歌」を重視しているように感じられた。高田漣の歌は、そう感じさせるほど深みがあるのだ。

 高田渡と高田漣は父子の関係であり、2006年には共演盤『27/03/03』もリリースしているが、音楽的には同じ道を歩んできたわけではない。しかし高田漣がこうして父に捧げるベスト盤とトリビュート・アルバムを制作したことは、ともにミュージシャンである父子の関係において理想的な「親孝行」と感じられた。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

■リリース情報
高田渡『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト』
発売日:4月15日
価格:¥2,500+税
【収録曲】
1この世に住む家とてなく
2自衛隊に入ろう
3ごあいさつ
4自転車に乗って
5おなじみの短い手紙
6コーヒーブルース
7系図
8鉱夫の祈り
9私は私よ
10私の青空
11当世平和節
12火吹竹
13フィッシング・オン・サンデー
14ヴァーボン・ストリート・ブルース
15冬の夜の子供の為の子守唄
16ホントはみんな
17夕暮れ
18ブラザー軒
19生活の柄

高田漣『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』
発売日:4月15日
価格:¥2,778+税
【収録曲】
1仕事さがし
2自転車にのって
3フィッシング・オン・サンデー
4ヴァーボン・ストリート・ブルース
5コーヒーブルース
6銭がなけりゃ
7ひまわり
8系図
9ブラザー軒
10生活の柄
11雨の日
12私の青空
13ホントはみんな
14おなじみの短い手紙
15くつが一足あったなら

トリビュート・プロジェクトオフィシャル

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