Berryz工房が紡いできた音楽のグラデーション 全楽曲をジャンル分類で振り返る(後編)

ワールドミュージック系

<和風>

・ハピネス 〜幸福歓迎!〜 [2004] ※シングル

 リズムは四つ打ちでキラキラした曲調だが、そこに鼓などの和楽器、歌舞伎風のかけ声などが散りばめられており、ジャパネスク感が演出された一曲。MVでは円卓などの中華的意匠、振り付けにはヴォーギングを導入と、交錯する異国情緒に拍車がかかる。

<沖縄>

・ピリリと行こう! [2004]
・かっちょええ! [2004] ※カップリング

 「ピリリと行こう!」ではお囃子&三線を沖縄出身のお笑い芸人・与座よしあきが担当。そのカップリング曲「かっちょええ!」も沖縄テイストにあふれているが、こちらはチップチューン風の音処理が随所に見られる。

<アジア>

・cha cha SING [2012] ※シングル
・Loving you Too much [2012] ※カップリング
・I like a picnic [2013] ※カップリング
・アジアン セレブレイション [2013] ※シングル
・ゴールデン チャイナタウン [2013] ※シングル

 「cha cha SING」でタイの人気歌手であるBIRDことトンチャイ・メーキンタイをカバー。以降「Loving you Too much」「I like a picnic」とタイPOPカバーシリーズが続く。そんなオリエンタル路線の延長として、オリジナル曲の「アジアン セレブレイション」「ゴールデン チャイナタウン」のディスコ調シングルが続いた。「ジンギスカン」「行けモン」のバカ騒ぎ路線の新たな展開としての「cha cha SING」はこの頃のBerryzを象徴する代表曲となったが、そのカップリング曲だった「Loving you Too much」は、原曲が持つ普遍的なポップスの良さに鈴木Daichi秀行の的確な編曲&つんく♂の訳詞というハロプロフレーバーが掛け合わさり、ある種の化学反応で大化けした一曲に。公式サイトで2014年に行われた「Berryz工房BEST SONG投票企画」では堂々の1位、ハロプロ楽曲大賞のスピンオフ企画「Berryz工房楽曲大賞」でも1位を獲得と、ファン人気が非常に高い。個人的にも十指に入る。

「Loving you Too much」

<中近東>

・女子バスケット部 〜朝練あった日の髪型〜 [2005]

 インドの楽器であるシタールが聴こえたり、アラビアなスケールだったりと、中近東テイストで味付けされた一曲。

<ラテン>

・TODAY IS MY BIRTHDAY [2004]

 トラックの音色はユーロビート風だが、リズムのキメなどからラテン風味だと判断。ラテン歌謡は「サマーナイトタウン」「抱いてHOLD ON ME!」など、初期モーニング娘。のサウンドキャラクターのひとつだった。

<ブラジル>

・夢で ドゥーアップ [2005] ※カップリング

 スペーシーかつドリーミーなブラジリアン・グルーヴが耳に心地よい。この曲や「秘密のウ・タ・ヒ・メ」など、いくつかある橋本由香利編曲担当曲はどれも高品質。

<ビートルズ>

・夏わかめ [2004] ※カップリング
・蝉 [2004]
・あいたいけど… [2006] ※カップリング

 『ビートルズの遺伝子ディスク・ガイド』(DU BOOKS)という書籍が成立してしまうほど、後世のポップスに影響を与え続けているビートルズ・サウンド。つんく♂自身も『A HARD DAY’S NIGHT つんくが完コピーやっちゃった ヤァ!ヤァ!ヤァ! VOL.1』というカバーアルバムを2000年にリリースしているほどのビートルマニアであり、ハロプロでもビートルズ風の楽曲がいくつかある。Berryzではこの3曲。特に「蝉」は中期ビートルズ的なアレンジ×夏休みの帰省の情景描写という歌詞が上手く組み合わさった、つんく♂もフェイバリットにあげる名曲。

<ビーチボーイズ>

・マジ夏すぎる [2006]

 夏をコンセプトにしたミニアルバム収録曲ということで連想されたのか、ビーチボーイズ風のコーラスが聴けるミディアムチューン。

<チャールストン>

・にぎやかな冬 / Berryz工房&矢口真里 [2005] ※カップリング
・ガキ大将 [2007] ※カップリング
・スプリンター! / 清水佐紀・夏焼雅 [2007]

 1920年代のアメリカで発祥したダンスおよびサウンド傾向。日本には大正時代に伝わってきたので、レトロな響きが加味される。

<タンゴ>

・夢を一粒 〜Berryz仮面 Endingテーマ〜 / Berryz仮面 [2008]
・エレガントガール / 氷室衣舞 (CV 菅谷梨沙子 / Berryz工房) [2010] ※シングル

 アルゼンチンで生まれたダンスおよびサウンド傾向。日本には昭和初期に伝わってきたので、やはりレトロな響きが感じられる。「夢を一粒」は「我ら! Berryz仮面」と同じく特撮ソング(というかアニソン)のパロディ。『無敵鋼人ダイターン3』ED「トッポでタンゴ」あるいは『夢見るトッポ・ジージョ』OP「Tango Chu Chu」あたりだろうか。氷室衣舞「エレガントガール」はアニメ『極上!!めちゃモテ委員長』の関連ソングで正確にはハロプロではないが、Berryzのコンサートにもセットリスト入りしていた。

<歌謡曲>

・恋の呪縛 [2004] ※シングル
・ジリリ キテル [2006] ※シングル
・告白の噴水広場 [2007] ※シングル
・MADAYADE [2008] ※シングル
・フラれパターン [2008] ※カップリング
・MOON POWER [2010] ※カップリング

 ここで言う「歌謡曲」とは、昭和テイストを感じさせる日本的なポップス、ぐらいの意味。「告白の噴水広場」はムード歌謡風でモロだろう。「MADAYADE」はエレキ歌謡。「MOON POWER」は昭和の大事件を扱ったBerryz工房主演舞台『三億円少女』のテーマ曲で、テイストは共通している、かも。「恋の呪縛」「ジリリ キテル」は若干無理矢理だが、前者はロシア民謡風のリフ、後者はショパン「革命のエチュード」の旋律が取り入れられており、舶来のサウンド様式を導入しつつ湿り気のある歌メロでまとめるという構造が昭和歌謡的、と解釈した。

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