スチャダラパーが語る“味”ありきのヒップホップ論「カッコよくするだけだったら誰でもできる」

「『マジでスチャ好きなんすよ』みたいな奴に限って、聴いてねえし見てもいねえ(笑)」(Bose)

ーー確かにね。今回も6年ぶりのアルバムでしょう。なぜそんなに時間がかかったのか…。

Bose:まとめてちゃんとアルバムにしないと、世間からは何もやってないと思われるっていう。ずっと音源は作ってて、自分達なりのやり方でリリースはしてたんですよ。

ーーライヴ会場とかでね。

Bose:だけどそれは世の中的にはカウントされないっていうのに4年ぐらいたって気づいて(笑)。TVの仕事とかするとさ、「音楽のほうは最近どうしてらっしゃるんですか?」とかマジで聞かれるから(笑)。けっこう「マジでスチャ好きなんすよ」みたいな奴に限って(笑)。ほんとかよ?っていう。聴いてねえし見てもいねえみたいな(笑)。そこで反省するわけですよ。結局アルバム出してこうやって取材受けたり、雑誌に載ったりしないとカウントされないんだと思って。

ーー逆にいうとアルバムを作る必然性みたいなものは、それ以外に感じてなかったってことですか。

Bose:前のレコード会社と契約が終わったあとに、こういう形態が面白いんじゃないかと考えたんですよ。自分らのライヴで(ライヴ物販用に作った)ミニ・アルバムみたいなのがTシャツとかと同じように売ってて、来てくれた人の多くが買ってくれる、という。そういうやり方の方が、レコード会社と契約して活動するよりも、作り方としても自由にできるし、お金の面でもむしろいいぐらいだったりする。レコード会社と契約してるメリットも、僕らはあんまりないから。広いスタジオとかも必要無いし、僕らとしては今の形でやって続けていければ、それでいいなと思ってたんですよ。

ーーインディペンデントでやったほうが。

Bose:完全にインディだし…レコード会社の目が入ると、曲を作って、そんなに直接的に怒られるようなことは書いてないけど、なんか難癖つけられたりすることはあるもんね。

ANI:なんでもないことでもね。

Bose:歌詞もそうだし曲でも。「この部分ちょっと…一応確認します」みたいな。鼻歌のようになんかの曲の一部を歌ってるのでもダメだったり。メジャーだと普通にあるからね。僕らが作るものって、そういうのが自然に入ってくるからさ。ANIが勝手に沢田研二の歌詞を引用したりとか(笑)。平気でやるからね。

SHINCO:やや問題になったけどね。

Bose:問題になったねえ。

ーーでもラップはそういう文化だから。

Bose:そう。もちろん許可とらなきゃいけないのはあるけどさ。ラップってそもそも人のやつを替え歌したりするのが面白いから。そういうのが好きなんだよ。ほんのちょっとした引用の範囲内なのに、それを「カバー申請しなきゃ」とかそこまでなってくると、もういいや、ってことになる。

ーー90年代の頭ぐらいと比べるとずいぶんうるさくなってるよね。

Bose:すごいあると思うよ。まあ昔のディレクターがユルすぎただけなのかもしれないけどさ(笑)。そういうのもあって、レコード会社を通さずにやってたわけ。だから僕らがちゃんとライヴ・ツアーをいっぱいやって、レコード会社とやるのを上回るぐらいの売り上げがあれば、それがいちばん良かったと思う。レコード会社とやるよりもCD売れてるじゃんって!

SHINCO:マドンナも既存のレコード会社じゃなくツアー制作会社と契約してるじゃないですか(ライヴ・ネーションとの包括契約)。それに近い。

ANI:近くないけど(笑)。全然スケール小さいけど(笑)。

Bose:主流でほんとに売れてる人がやれば、絶対こっちのほうがうまくいくんだけど。だから僕らのノウハウで売れてるやつがやれ!っていう(笑)。だから…これでいいと思ってたんですよ。これで成功すれば勝ち!みたいな。でも僕らだと(売り上げの)マルが一桁少なくて話題にならない、みたいな(笑)。

ーー今作はそうしてこれまでライヴ等で販売していた曲を集めたってことですよね。

Bose:そう。こうして自分らがインディーズで作ってライヴで売ってた音源をまとめてアルバムにする、っていうのはいいモデルだよね。6年だとちょっと長すぎるけど(笑)。2~3年ぐらいのスパンでまとめられれば。制作に関しても、僕らとロボ宙ぐらいしか必要ないからね。

ANI:あとエンジニアとね。

Bose:超節約型でいけるし。

ーー録音はホームスタジオ?

Bose:うちと、あとはいつも使ってる歌入れの小さなスタジオ。

ーー結局レコーディングもヴォーカルのブースだけあればいいってことだよね、スチャの場合。

Bose:そうなんですよ。ちょっと楽器…ベースや鍵盤が入るぐらいだから。それも全部ラインで録れるから。部屋で鳴らすことはほぼないし。

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