ドレスコーズ志磨遼平、“ひとりぼっちのアルバム”を語る「極限状態を望んでいる自分がいる」

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「こういう状況の人間が作る音楽が面白くないはずはない」

――アルバムについて話を戻すと、志磨さんの音楽の軸足はドレスコーズ以降、バンドのアンサンブルとその革新にあったと思います。けれど本作は、ロック史でいうとジョン・レノンの『ジョンの魂』やルー・リードの『コニー・アイランド・ベイビー』のような、ポップでありつつ歌が真ん中にあるアルバムですよね。“災い転じて…”ではありませんが、これは素晴らしいアルバムだなと思って聴いています。

志磨:僕自身、こういう状況の人間が作る音楽が面白くないはずはないなと思う(笑)。今回のアルバムのテーマは、「とにかく、いますぐに出すこと」という、ただ一点でしたから。2週間ですべてを録りきらないと、発売が延期になってしまう……という期限があったのもよかったですね。最初から、僕のキャリアの中でも面白いものができるだろうな、と思っていました。

――孤独の影は感じるのですが、それがある種の色気というか、官能的なものに昇華されている印象でした。ひたすら落ち込んで止まっていたら、こんな作品はできなかったでしょうね。

志磨:人間の持っている恐ろしいところですよね。こんなときに笑うなんて、「この悪魔め!」と(笑)。極限状態をどこか楽しんでいたり、もっと言うと望んでいる自分がいて。エロスとタナトスじゃないですけど、生きているからこそ死というものに妙な魅力を感じるし、「死ぬかと思った」というときこそ、人は生き生きするものでもあって。

――なかでも「スーパー、スーパーサッド」はすごく官能的です。イエ・イエ・イエという声が、志磨さんの叫びなのだけれど、それがマッチョなものではなく、優しく響いてくる。

志磨:ものすごく悲しいときって、僕はこういう心象風景ですよね。言葉で伝えるのは難しいけれど、音楽なら上手に表現できる。口で言えないというのはメンバーも同じで、みんな不器用だったと思います。苦しいとか、辛いとか、誰も言わなかったし、僕もそうでした。

――曲にすると、一発で伝わるところがありますよね。

志磨:そうなんですよね。もちろん悲しいんだけれど、不思議と風通しがいいというか。「ああ、何もなくなったんだな、僕には」って。

――今回のレコーディングは、どんなふうに進んだのでしょうか? まずは志磨さんがデモを作ってという感じでしょうか。

志磨:そうです。そこから、『Hippies E.P』のときにご一緒した、作曲家・編曲家の長谷川智樹先生に協力していただいて。年は親子ほど離れているんですが、音楽的なつながりがものすごく強くて、迷わずにお願いしました。最短距離でゴールまでうまくたどり着けるようにお手伝いしてください、と。それで、先生とベース以外のすべてのトラックを録音して。僕のフェティシズムみたいなもので、ベースだけはベーシストに弾いてほしい、ということで、友人の有島コレスケくんにお願いしました。最後にベースを入れるという、ポール・マッカートニー方式で(笑)。

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