坂上 忍が語る、デヴィッド・ボウイの魅力「変化に対して勇気を持ったアーティストだ」

20141118-sakagami3.jpg

 

「目が違うんですよね。魅入られるというか吸い込まれるというか」

――ボウイは、グラム、ベルリン時代、ニューウェイヴ、そして『レッツ・ダンス』でのメガ・ヒット期とさまざまな時期がありましたが、どの時代がお好きですか?

坂上:聴きやすいのは『レッツ・ダンス』とかの時代だと思うんですけど『スケアリー・モンスターズ』のころもいいですよね。「ファッション」とか好きです。これに影響されてデュラン・デュランとか出てきましたものね。

――ライヴはご覧になられたことはありますか?

坂上:ぼく、生ではないんですよね。機会があったら観にいきたいですよ。ボウイはぼくより20歳うえなんですよね? え、67歳!? でもまた、ぜひやってほしいと思います。

――シンガーとして、俳優として意識した、あるいは影響を受けた点は?

坂上:中学生のころにカッコから入ってましたから。シャツに吊りバンドして、白いズボンをはいて、パナマ帽みたいなのをかぶって。いま思えばメチャメチャ恥ずかしいカッコしていました。全然似合ってなかった(苦笑)。イギリスにレコーディングに行ったのは18、9歳のころだったと思うんですけど、その前に1回プライヴェートでひとりで行ってるんですよ。そのときワム!のヘア・メイクをやってるひとの店(美容院)があるって聞いたので、予約して、空港に着いてホテルに寄らずに直にそのひとのお店に行って金髪にしてもらったんです。ボウイみたいに。そのあとソーホーの服屋に行って、(ネオ・)サイケな格好になって街を歩いてたら、地元にひとにメチャメチャ嫌われましたね。それでもくじけずに夜、ディスコに行ったんです。そこは地下にあったんですが、オーナーさんが日本人だって聞いていたので、ちょっとは安心かな、と思って。階段を下りていったら、モヒカンのマネキンがいたんですよ。ところがそれは本物の人間で。これ、ヤバイな、と思いながら店に入っていったら、またなかはそんなひとたちばっかりで。そこでも“日本人が何で金髪にしてるんだ!”って言われて袋叩きにあったんです。そのときは気づいたオーナーさんが止めに入ってくれて、何とかなったんですが、散々な目にもあってるんです。

――大変な目に遭いましたね。

坂上:まぁ、それくらいブリティッシュ・ロックにはまっていたんですね。もちろんレコード屋さんにも行って、そのときはハワード・ジョーンズとかデペッシュ・モードとかあそこらへんを買いまくりましたからね。楽しかったですよ。いまだにあのころの曲がやっぱり好きですね。そんななかでもボウイは別格でしたね。好きな曲はもちろんいっぱいあって、こんなこと言ったら何なんですけど、歌がうまいっていう印象があまりないんですよ。ただ……何か、三輪明宏さんみたいな感じ? 紅白歌合戦での三輪さんの「ヨイトマケの唄」って強烈だったじゃないですか。あれにはたぶん若いひとたちも衝撃を受けたと思うんですけど、ボウイを見ると三輪さんみたいな感じがします。

20141118-sakagami5.jpg

 

――今回、ボウイのデビュー50周年を飾る作品として発売される『ナッシング・ハズ・チェンジド』ですが、タイトルは〈何も変わっていない〉という意味です。坂上さんも長いキャリアをお持ちですが、共感する部分はありますか?

坂上:共感と言うと恐れ多いですけどね。ぼくがこの1、2年バラエティ番組に出させていただくようになって、“こんなひとだったの?”とか“そういうひとだと思っていなかった”だとか意外な印象を持っていただいてる方が多いと思うんですけど、実はぼくも何も変わっていないんですよ。当然、歳を重ねることによってそれに応じた変化はあると思いますけど。例えばお芝居とかしていても、若いときはうまくなりたいとか向上心があるじゃないですか。それが年齢を重ねていくと、削ぎ落とすじゃないんですけど、余計なことは何もしたくないと思うようになっていって。着飾ることをやめたいとか芝居と思われるのは嫌だとか、よりプレーンな方向にいきたくなるものだと思うんですよね。先輩の役者さんとお話してても、芸を突き進むひともいれば、逆に芸を削いでいって生まれたままの姿で出ていった方がよっぽど伝わるんだっていうタイプのひとがいて、ぼくは後者の方が好きなんだっていうのがわかってきたんです。そうすると何も変わらなくていいし、極端に言えば何もやらなくてもいいし。気持ちさえあれば。そう思い出したのは40歳過ぎてくらいからですかね。それでずいぶん気が楽になった部分があると思います。だからこのタイトルをつけた気持ちがわかると言うとかなり生意気になっちゃいますけど、さすが粋なタイトルと言うか。20もうえの67歳の先輩が、こういうことを言ってくれるとぼくらは楽になります。〈あ、これでいいのかもしれない〉っていう。

――『ナッシング・ハズ・チェンジド』は3種(3CD、2CD、1CD)のフォーマットで発売され、そのなかでも1CDは日本だけにボウイ自らが選曲して特別に許されたヴァージョンです。

坂上:それも嬉しいですね。彼は日本ひいきですものね。やっぱりぼくは「チャイナ・ガール」が入ってるのが嬉しいです。シングルにはなりましたけど、そんなに派手な曲ではないんでね。これを入れてくれたことに感謝です。とにかくこの曲が好きで、これを『レッツ・ダンス』からシングル・カットしてくれたときも喜びました。ジョン・レノンとやった「フェイム」も入っていますし、これを聴けばボウイがわかるって感じですよね。どうせだったら写真集も一緒に出してくれればよかったのに(笑)。何でボウイの写真ってこんなに魅力があるんだろうっていつも思っていましたから。目が違うんですよね。魅入られるというか吸い込まれるというか。ぼくはそっちじゃないんですけど、ボウイだったらちょっと……って気にさせられる目をしていると思いますよ(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる