赤い公園・佐藤千明が語る、"ポップな存在”への道「曲も人間も開けてきている」

「音楽的に、赤い公園が理解されるには、結構長くかかると思ってる」

――では、佐藤さんがフロントマンとしてステージに立つという面では、何か意識していることはありますか?

佐藤:私はお客さんの目を見て歌うと、その人に近づけた感じがするので、より多くの人の目を見て歌うようにしてます。その瞬間にすごく気持ちを込めることができて、優しくもなれるというか、「今ここに来てくれた人たちにしか歌えない歌を歌えてる」っていう実感が湧くので、目を見るのはすごく大事にしてます。

――でも、意地悪で言うわけじゃないけど、夏フェスとか、大きなイベントだとなかなかそういうわけにもいかないと思うんですね。実際、今年の夏ってたくさんのフェスやイベントに出たと思うんですけど、そういう中で思ったことはどんなことでしたか?

佐藤:私、これまで「みんなで同じ気持ちを共有して楽しむ」っていうことをやってこなかったんです。だから、見られ方によってはすごく独りよがりな煽り方になってたと思うし、実際に自分で自分たちの映像を見返しても、お客さんを突き放しちゃってるんじゃないかって思うときがあって。それで「どうしたらいいんだろう?」って考えたときに、もうちょっと素直に、感謝の気持ちを述べてみようと思って、ライブが終わるときに、「ありがとうございました」って言うだけでも、全然違うんですよ。それをやってると、どんどん楽になって、ちゃんと開けて歌えるようになってきたんです。きれいごとだとも思うんですけど、私にはその部分がすごく大事なんですよね。

――そういうメンタルの部分も絶対大事だと思います。

佐藤:あとは、フェスとか大きいところでやらせてもらうときは、ライブだって思わないというか、より異常な空間だっていうのを頭の中で意識して、歌うようにしてます。そうすると、より曲の世界に入り込めるんです。

――「ここはディズニーランドだ」みたいな?(笑)

佐藤:「ふやける」でそう思ったら大変なことになりそうですけど(笑)、でも、そういうちょっと異常な空間だって思うとハマる曲もあるので、お客さんも「全部地蔵だ」とか思うと(笑)、自分も違うものになれる感じがするんですよね。なおかつ、その差がちゃんと目に見えてわかるぐらいじゃないと意味がないと思うので、そこも今回のツアーで極めたいところですね。

――そうやって曲ごとにアプローチを変えるっていうのはすごく納得で、赤い公園って、さっき静と動って話があったように、曲調もアレンジの幅も広くて、つまりは表現する感情のレンジもすごく広いですよね。でも今のフェスって、「盛り上がる」っていうひとつの価値観が強くなり過ぎて、フェス疲れしちゃってるバンドも多いと思ってて。

佐藤:バンド内でもそういう話は出て、「どうしたらいいんだろう?」っていうのはありました。フェスにもよると思うんですけど、やっぱり「みんなで楽しもう!」っていうお客さんが多いのかなって思って、だからといって、「そっちに寄せる」っていうのもどうかと思う。ただ、やっぱり今の自分たちの立ち位置を考えたときに、まずはいろんな人に知ってもらいたくて、若い人の心にもちゃんと届いてほしいから、割り切らないといけないところもあると思ってて。

――うん、変に頑なになるのも、それはそれで違うと思うしね。

佐藤:もちろん、自分たちとしてはフェスでやりたい曲がいっぱいあって、「交信」とか「きっかけ」みたいな聴かせる曲もやりたいんですけど、盛り上がりたくて来てるお客さんに対して、そういう曲をやって自分たちになびいてくれるのかっていう葛藤はあって。そう考えると、自分たちがやりたいことを貫き通すっていうのは、まだもうちょっと先かなって思うんですよね。音楽的に、赤い公園が理解されるには、結構長くかかると思ってるので、今は頭を柔らかくして、盛り上がりたい人たちの前では、私たちもその人たちと一緒に盛り上がって、楽しむっていう、それが一番いいかなって。

――うん、だからフェスはフェスで考えつつ、ワンマンでより濃密な自分たちの世界観っていうのを提示していくことが大事になると思うんだけど、ここからは完全な僕の妄想というか願望で、赤い公園は近い将来ホールでやるようになってほしいなって思ってて。

佐藤:あー、それ嬉しいです。

――もちろん、場所とか相性もあるけど、基本的にはライブハウスよりもホールの方が音がいいから、最初に話したプロフェッショナルな部分とか、歌詞の聴き取りやすさとかも、より伝わりやすいと思うし、あと「交信」とか「きっかけ」とか「風が知ってる」みたいなタイプの曲って、ホールの方がその魅力がより伝わると思います。

佐藤:「早くホールでできるようになりたいね」っていうのは、メンバーとも話してます。たぶん、音楽的にもホール寄りなんじゃないかなって。やりたいですねー、ホール。

――ちなみに、今のアイドルって、日本武道館が共通の目標になってるじゃないですか? 赤い公園にも、そういう目標ってあるんですか?

佐藤:「武道館でやりたいね」っていうのは言ってます。あと中野サンプラザもやりたくて、アップアップガールズ(仮)とかaikoさんを見たことがあるんですけど、音の感じもよかったし、照明ひとつで感情がすごい動くんですよね。あとは……見やすい(笑)。

――(笑)。でも、中野サンプラザ改修に入っちゃうかもしれないんだよね。

佐藤:そうなんですよ! 今オリンピックに向けて、どんどん会場がなくなってるじゃないですか? 何とかその前にやるか、もしくは改修後のこけら落としを(笑)。

――もしくは、オリンピックの開会式で演奏するとか?

佐藤:それ、すごい! 2020年……あと6年か……よし、頑張ろう!

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