かりゆし58はバンドと人生をどう結びつけてきたか?「必要なのは“欲しいものを取りに行く”姿勢」

「“そもそも、音楽にメッセージなんて必要か?”みたいなことを思って」(前川)

――その空気はCDにも確実に反映されていると思います。

前川:あと、もうひとつ“いいな”と思ってることがあって。このアルバムの4番バッター的な存在になってる「愛を信じてる」は直樹の曲で、俺が“一生大事にしたい”と思ってる「生きてれば良い事あるみたいよ」は行裕の曲なんですよ。

――「愛を信じてる」は大きな広がりを感じさせるラブソングですね。

宮平:僕はあまり歌詞を書かないので、曲調とかメロディが主なんですけどね。この曲を書いたときは、洋楽っぽくて、デッカイ感じの曲にしたいと思ってました。

前川:直樹はいままで(デモの段階では)メロディを鍵盤で弾いたりしてたんですけど、“何でもいいから、歌詞を書いてみたら”って言ったんです。そのなかに“無限”という言葉があって、それがこの曲のメロディにすごく合ってたんですよね。語感もいいなって思ったし、直樹のデモに秘められていたものが、歌詞にも活かされてるんですよ。こういうふうに真っ直ぐ愛を歌うことを避けてた時期もあったんですけど…。

――どうしてですか?

前川:“そもそも、音楽にメッセージなんて必要か?”みたいなことを思って。俺がお客さんだったら、母親のことを歌った曲を聴いて、気分が上がるかな? とか。でも、最近は“愛とか夢なんて言ってても、しょうがない”みたいな雰囲気があって、それは良くないなって思ったんですよね。愛や夢でお腹がいっぱいにならないのは確かだけど、それを言うことがファッションみたいになってるというか。だったら、思い切り愛や夢を歌って、突き抜けるほうがカッコいいな、と。

――なるほど。「生きてれば良い事あるみたいよ」はどんなテーマで制作したんですか?

新屋:勝手に“ACの広告でこういう曲が流れてたらいいだろうな”って(笑)。歌詞を書いているうちに“悩んでいる人が聴いたときに、力になれるような歌にしたい”って思ったんですよね。ライブに来てくれる人もたぶん、いろいろと悩みがあるだろうし、“自分が好きなアーティストのライブに行って、こんなことを歌ってくれたら嬉しいだろうな”と。いちばん、お客さんの立場になって書いた曲かもしれないですね。あとはもう、優さん(プロデュースを担当したBEGINの島袋優)のおかげです。

前川:すごく愛情を持って接してくれるんですよね、優さんは。この曲のギターソロは勝さんと行裕が同時に録ってるんですよ。ブースのドアを開けっ放しにして、“どっちかが間違ったら、もう1回ね”っていう。

新屋:すごくいいレコーディングでした。

前川:しかもこの曲、もともとは行裕が歌うはずだったんです。でも、他の曲の作業をしているときも、ずっとこの曲のことが頭に浮かんでしまって。“一生大事にするから、歌わせてください”って告白したら、“いいよー”って(笑)。

――アルバム全体を通して、演奏も生き生きしてますよね。

前川:最近、ベースを弾くのが楽しいんですよ。たぶん、他のメンバーも演奏するのが楽しくなってきてると思うんですけど。

中村:確かに最近は楽しいですね。全体のグルーヴも良くなってる気がします。

前川:以前はいろんなことが気になってたんですよね。縦のリズムが揃わないとか、歌うとベースが走る(速くなる)とか。いまは足りないところよりも、良いところを見るようにしてるんですよね。

――楽曲制作の話にも通じてますね、それは。

前川:そうなんですよね。だから、ヘンにビクビクしなくなってるんですよ。たとえば行裕のギターソロのとき、機材トラブルで音が出なくなったとしても、バッキングだけループさせて場を繋いだり。あと、いきなり直樹に“あとひと回し、ギターソロ弾いて”って無茶ぶりしたりとか。

宮平:ハプニングを楽しめるようになってきました(笑)。

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