赤い公園・津野、ゲス乙女・川谷、パスピエ・成田…楽曲提供でも光る若手バンドのコンポーザーたち

indigo la End/ゲスの極み乙女。・川谷絵音

 先日の『ミュージックステーション』に出演して以降、その名がさらに世間に浸透した、プログレッシブ・ポップ・バンド、ゲスの極み乙女。と、切ないギターサウンドと透明感のある声が特徴的なindigo la End。この2バンドのフロントマンを務める川谷絵音は、SMAPの『Mr.S』において「あまのじゃく」「好きよ」を提供。「あまのじゃく」ではゲスの極み乙女。的なプログレッシブ・ポップに、SMAP5人による癖のあるユニゾン歌唱が上手くハマっており、1曲の中に良い意味で雑多なポップさを含んだ楽曲になっている。そして「好きよ」は、2バンドのどちらでもない、【素の川谷絵音】が書いた歌モノ。どちらも違ったアプローチで『Mr.S』というアルバムに重層的な深みと魅力を与えている。

 川谷はリアルサウンドのインタビューで「(10代の頃は)オリコンに出てくるようなJ-POPしか聴いていなかった」「一度ロックシーンに入る必要がある」といった発言をしており(参照:indigo/ゲス極のキーマン川谷絵音登場「バンドシーンを通過して、唯一の存在になりたい」)、メジャーシーン、ポップスのフィールドで活躍することを前提にアプローチをしてきたことが伺える。いまや実際に、アイドルや芸能人がこぞって名前を挙げるアーティストへと成長しており、10月29日発売のアルバム『魅力がすごいよ』では、存分にそのポップセンスを見せてくれそうだ。

Wienners・玉屋2060%

 10月19日から、初の地上派冠番組『でんぱジャック World Wide Akihabara』(フジテレビ系)がスタートするなど、サブカルチャーのフィールドから大衆に愛されるアイドルへとそのポジションを変えているでんぱ組.inc。彼女たちのヒット曲である「でんでんぱっしょん」や「サクラあっぱれーしょん」を作曲し、ブレイクに一役買っているのはWiennersのフロントマン、玉屋2060%だ。(参考:でんぱ組.incへの楽曲提供でも話題 Wiennersが音楽的ルーツとする「3つの街」とは?)ハードコア・ファストコアとポップスを組み合わせた異質なサウンドで、バンドシーンにおいて人気を誇っていた彼らは、でんぱ組.incへの楽曲提供をきっかけに、玉屋のポップスを作曲する才能が一気に開花。SEBASTIAN Xのメジャーデビューアルバム『イェーイ』で表題曲のリミックスを手がけたり、吉祥寺Pを名乗ってニコニコ動画にバンドの楽曲である「VIDEO GIRL」の初音ミクバージョンを投稿するなど、バンドシーンにとどまらない活躍を見せている。

 バンドは先日9月7日のライブでMAX(ボーカル・キーボード・サンプラー)とマナブシティ(ドラム)が脱退し、次の活動へ向けての準備期間に入っているが、今後の編成・活動にも要注目だ。

 近年では一般的になった「バンドとアイドルのコラボ」という試みは、アイドル側に新しい風を吹かせるとともに、バンド側にとってもアイドルという知名度の高い媒介を通すことで、自分たちの音楽性をこれまで届かなかった層へとリーチさせる手段として機能している。バンドの音楽ジャンルにこだわらず、フロントマンが上質なJPOP楽曲を書けることは、バンドがブレイクするきっかけの一つとなるのかもしれない。

(文=向原康太)

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