iPhone6発表と同時にU2の新アルバム無料配信 バンドとAppleの狙いとは?

「今作におけるU2のリリース方法は、日本だと“ちょっとしたスパム”のように扱われがちですが、たとえば『Spotify』などを使用している方たちにとっては『朝起きたら新作がライブラリに勝手に追加されている』という日常の風景なのです。おそらくApple社の戦略としてはiCloudとBeats買収の延長線上にある話で、若い世代はiTunesという音楽プレイヤーに『ダウンロードないしCDをリッピングした音源を貯めておく場所』というイメージが付いており、それに対し『クラウド上の(無数の)楽曲をいつでも好きにダウンロードできる場所』へとユーザーの意識を変えていこうということにあると思います」

 さらに今回の施策の背景には、ダウンロードとストリーミングをめぐるビジネス環境の変化があるとも指摘。

「今回の施策はここ数年で徐々に起こっている“音楽を所有する”という意識の変化を加速しそうです。ただ、これをもって単に“音楽が無料になっていく”と捉えるのは早計でしょう。ボノは公式サイトでApple社が新作の独占配信の権利を購入したと告げています。おそらく相当の額がバンドに支払われたはずで、その背景にはiTunesのイメージ戦略があると思われます。海外では現在『Spotify』などのストリーミングソフトによる再生は伸びる一方で、ダウンロード購入の数は下がっている。そういう意味でも、iTunes Matchなど、クラウドストレージを使った音楽の聴き方を提案しているApple社にとって、今後の会社の方向性を決める非常に大きなトピックだと思います」

 U2とAppleが最初に手を組んだ『iPod(R) U2 Special Edition』が登場した時と同じように、今回の『iPhone 6』と『iPhone 6 Plus』、さらに時計型『Apple Watch‎』と『Songs of Innocence』の発表は、今後の音楽界にも大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

(文=中村拓海)

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