9mm 菅原卓郎が語る、歌とサウンドの関係「自分の声は自分のギターの音に似ている」

「自分の声は自分のギターの音に似ている」

――聴き手としても、9mmは4人でひとつの音楽世界を作り上げていくバンドであって、個人の思いを表現するというイメージはありませんでした。この曲は「個人の思いを表現しても9mmの作品になる」ことを示した作品とも言えるのでは?

菅原:そういう変化のときでもあるのかもしれないし、そもそも曲が「そういう風にしたらいいんじゃない?」と言ってくる感じでした。他の曲だったらそうなったかはわかりません。配信リリースのみで1曲だけ出すということも大きいんじゃないかな。まず今年は10周年を迎えてベストアルバムも出したし、ツアーもあるので、それを邪魔しないようにしたかった、というのもひとつあります(笑)。でも新しい曲なしに10周年のツアーをするのもちょっと淋しいじゃないですか? でもベスト盤はちゃんと歴史を感じられるものにしたかったから、足跡のない新曲をそこに入れるのもちょっと違う。今回はそんな気分だったんです。それで7~8曲の中からこの曲が選ばれたのは、単にこれがメンバーの今の気分にすごくあっていたからですね。

――『生命のワルツ』が候補に挙げられた曲の中で一番気分にあっていた、というのはどういう部分でしょう?

菅原:これまで出してきた曲の流れも考えて、久しぶりに新曲をリリースするならば何が一番、良い意味で意外性があるか、というところです。いつもそういう考え方をしますけど、今回はこの曲が歌詞もサウンドもそれにフィットしていると思いました。音楽的には実は6/8拍子なんだけど、一聴したらそうとは分からず、すごくストレートなスラッシュの曲に聞こえる(笑)。そこが「こいつら、やるな」というひねりになっていると思うし。

――前回のインタビューで、卓郎さんは「水路を作る」という村上春樹の言葉をひいて、「『9mmの水が飲みたい』『ロックの水がないと生きられない』っていう人たちが飲める水を作っておきたい、存在していなきゃいけない」とお話になっていました。その使命感のようなものが今回の曲にも表れているのでは?

菅原:使命感と呼ぶのかどうかはわかりませんけれど、バンドを続けたい、という気持ちは強くあります。前も言ったように、ロックじゃなきゃ埋まらないものを持っている人たちに届けられるようにしたい、という気持ちです。ロックを知らなくては前に進めない人もいるかもしれない。そういう人たちに届けたいです。使命というより、「いるんだったら届けたい」と、こっちが勝手に希望しているだけですけど(笑)。

――ご自身にとってもロックミュージックは大きなものですか?

菅原:いろいろな音楽が好きですけど、ロックを聴いたときに得られるものはやっぱり違います。だから、ロックがないとうまくいかない、という隙間を自分自身が持っているんだと思います。自分がやるんだったらロック、という意味でも自分に向いていたんでしょうね。

――「届けたい」という思いを伝えるものは歌であり、歌には声が大きく関係すると思います。ご自身の声の力について、どのように捉えていますか?

菅原:好き嫌いがありそうな声だと思います。「他にない、何とも言えない不思議な声」と最近対バンした人から言ってもらいました。たしかに格別甲高いわけでもないし、意外と良い声なんじゃないかな、と思ってます(笑)。歌に関しては、ライブをしていく中で「嵐のようなバンドサウンドの中で、歌を聞かせるにはどうしたらいいのか」と、ずっと研究しながらやってきました。最初はみんなと競争するように暴れていたんですけど、それだとバンドが成り立ってない、と気づいたんです。あと、自分の声は自分のギターの音に似ていると思います。好きな音というか、自分にとって自然な音なんでしょうね。滝のギターの音って帯域的に上から下までドーンと出ているんですけど、滝はコーラスもアタックがすごく早くてドーンと出るんです。一切タメがなくて俺より早く出てくる(笑)。逆に自分の声は、アタックが少し遅くてボワンとしてます。ギターの音の趣味もそういう感じで、放っておいたらメタルの音にならないから、意を決して音作りしてます(笑)。だから、もしかしたらボーカルの人の、声と楽器の音は似ているんじゃないか、という説を持っているんです。浅井(健一)さんのギターもそうじゃないですか?

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