9nine、武道館公演で見せた「ガールズポップの本質」とは? 自由奔放なユニットの個性を追う

9nine 武道館公演

 

 9nineとは何か? “パフォーマンスガールズユニット”としてのアイデンティティを問われ、彼女達自身はもちろん、制作者側も、そしてファン達もその答えを出さなくてはならない場所。それが今回、8月21日に行われた初武道館公演だったのではないかと思う。

 そんな緊張と興奮が渦巻く会場では、お馴染みの9nineコスプレの子供達から、急増中の9nineにあこがれる若い女子、9年間彼女達を支えてきたであろう熱烈なファンまで、幅広い層のファン1万人が固唾を飲んでその瞬間を見守っていた。

 「With You / With Me」のアルバムバージョンで幕を開けたライブは、2曲目『MAGI9 PLAYLAND』からの「out of the blue」が流れた時点で、筆者の予想は完全に確信へと変わっていった。低音の出方が完全にフロアーオリエンテッドなダンスミュージック仕様となっていて、その「ロー」の迫力は、会場全体がどうノッていいのか戸惑うほどだったのだ。やはり9nineの音楽性は常に変化・進化を続けていて、それがこの低音の鳴りに現れているに違いない。ひょっとしたら今後、BABYMETALが海外のメタルフェスに参戦しまくっているように、世界中のEDMフェスに参戦することになるのではないだろうか……。しかし、そんな浅はかな「見立て」は、川島海荷のMCで徐々に揺らいでいく。

「わたし、全然今日が初めての武道館なんだぁっていう実感なかったんですけど、さっきみんなで遂にぶどうぱん食べたんですよ!!」

 ぶ、ぶどうぱん?

「武道館でぶどうぱんを食べてやるー!!ってずっと思ってて、その夢が叶いましたぁー!!」

 えぇ、ダジャレ!?

 その後も『MAGI9 PLAYLAND』からのエッジーな曲を交えつつ、9年間の歴史を走馬灯のように蘇らせる過去曲が連発されるが、MCの度に「過去の総決算、そこからの新しい9nine」というストーリーはことごとく崩壊していった。その極めつけが後半、ここぞというタイミングでの佐武宇綺によるこの一言。

「すいません……やっぱり私、今日もマイク"水没"させちゃいました」

 まるでヘリウムガスを吸ったかのような明らかな変声。汗っかきで有名な佐武宇綺は、いままでのライブでも何度かヘッドセットのマイクを汗の雫で故障させてきたが、この大事な武道館公演でもやってしまったのだ。明らかなアクシデントで佐武宇綺がステージからはけている間、他のメンバーはまるで今までの緊張感から解放されたように、セットに設置された階段に座り込む。そして、まるでコンビニ前にたむろする部活終わりの女子中学生のようなゆるゆるトークをはじめた。

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