メキシコでは海賊版グッズも流通! 25カ国回ったスカパラが語る、海外フェス&ライブ事情

「印象的だったのはエストニアかな。当時はロシアから独立したばかり。フェスの前日にカフェで“ペドラーズ”を演奏したら、みんな黙って下を向いちゃった。親しみやすくて盛り上がるかと思ったけど、まだロシアに対して対立感情があったんでしょうね」(谷中)

 デビューアルバムに収録されたロシア民謡“ペドラーズ”のカバーは、最新作『SKA ME FOREVER』でも再録されている。情熱的なインストゥルメンタルは言葉の壁を超えて人々を踊らせ、アグレッシヴなパフォーマンスはジャズ/ラテン/ロックなどジャンルの壁を超えて世界中で歓迎されてきた。しかし、現状に満足することは決してない。初めての国でも、どんなに劣悪な環境でも、そこにいる人間を「ひとり残らず幸せにする」という目標。これが、平均年齢48歳のバンドをいまだに突き動かすエネルギーとなっている。

「まだ25カ国。行ったことのない国のほうが断然多いし、行きたい国はまだまだたくさんある。そういう目標があるとバンドは停滞しないですよね」(谷中)

 一度も止まることなく走り続けてこられたのは、彼らの主戦場がライブだったからでもある。どれだけ頭をひねっても、人前で演奏すれば一瞬で答えが出る。ミュージシャンがレコードよりもライブの現場を重視するようになったと言われる近年だが、ずっと以前から「外に出ていってナンボ」の姿勢を貫いてきた東京スカパラダイスオーケストラ。彼らのミュージシャンシップから学ぶことはまだまだ多い。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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