the brilliant greenの音楽はなぜ色褪せないのか 新作アルバムに見る「楽曲の強度」

卓越したセルフプロデュース力

 「アイドルをプロデュースしたい」。ブリグリがチャートを席巻していた時代に川瀬が言った言葉だ。当時モーニング娘。が新たなアイドルグループの形としてシーンには居たが、世間から見ればアイドルはマニアな世界だった。しかし、それは数年後、自らが別人格を作り出し、それを川瀬智子がプロデュースすると言う形で世に出ることになった。Tommy february6の誕生である。ポップに振り切ることを誰もが恐れたこの時代、眼鏡姿の優等生を装いながらも小指を立てながらマイクを握り、笑顔を振りまくわけでもなく、仏頂面で歌う乙女チックな潔さの見事なまでの確信犯は、シーンにおいて完全勝利した。一見、お遊びプロジェクトに見せかけて、ユーロビート、ニューロマンティック…といった70年〜80年代の懐かしき電子音で巧みに構築された楽曲は、コアな音楽ファンをねじ伏せ、後のPerfumeに見られるようなサウンドをいち早くリスナーの耳に馴染ませることになったはずだ。そして、2003年にデビューしたダークサイドである、Tommy heavenly6では、アメリカン・オルタナティブ・ロックを基としているが、独自のゴシックやゴスロリといった世界観を取り入れるようになり、ジャパン・カルチャーと共に海外での知名度・人気も高い。ちなみに、今や初回限定盤のスタンダードとなっている“DVD付きCD”の商品形態は、Tommy february6『EVERYDAY AT THE BUS STOP』(2001年)が国内初である。ブリグリのデビュー時にはくわえタバコでやさぐれた印象のあった川瀬がセルフプロデュース力とクリエイティブな才覚を開花させ、かつガーリーなアイコンとなったところが興味深くもある。

 今作から川瀬1人のアーティスト写真になっている。バンドというよりも、ソロプロジェクトの延長にある見え方も否めない。だが、これまでの敏腕セルフプロデュースを見せてきた川瀬と、確固たるサウンド面を支える奥田であるから、新たなthe brilliant greenという姿を見せてくれることだろう。ブリグリサウンドの中核を成していたギターの松井が脱退というマイナスからの復活作『BLACK OUT』(2010年)で見せてくれたバンドの輝きがあったからこそ、今後も楽しみで仕方がない。今作はあくまでオリジナルアルバムに向けての仕切り直しという位置のようだ。ただ、そう言っておきながら、次作に向けてはまだ動いてない様子で、相変わらずマイペース過ぎる川瀬の自由奔放さに、ある意味安心すると共に、今作を聴きながらオリジナルアルバムを待つことにしよう。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

■リリース情報
『THE SWINGIN’ SIXTIES』
発売:7月23日
価格:¥3,000+税
※初回プレス盤のみ7inchジャケット仕様

<収録内容>
1.There will be love there~愛のある場所~(from 1st Al「the brilliant green」)
2.冷たい花(from 1st Al「the brilliant green」)
3.You & I(from 1st Al「the brilliant green」)
4.Rock'n Roll(from 1st Al「the brilliant green」)
5.Hello Another Way-それぞれの場所-(from 3rd Al「Los Angeles」)
6.Stand by me(from 15th sg「Stand by me」)
7.Bye Bye Mr.Mug(from 1st sg「Bye Bye Mr.Mug」)
8.そのスピードで(from 2nd Al「TERRA2001」)
9.Blue Daisy(from 5th Al「BLACKOUT」)
10.長いため息のように(from 2nd Al「TERRA2001」)
11.A Little World(新曲)

<CD購入者オリジナル特典>
the brilliant green応援店 オリジナル特典
「A Little World」DVD
対象店にて「THE SWINGIN’ SIXTIES」をお買い上げのお客様に先着で特典DVDをプレゼント。数量制限あり。
特典対象店:後日、HPにて発表

■ライブ情報
『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014』
日時:2014年8月3日(日) 開場8:00/開演10:30
会場:茨城県 国営ひたち海浜公園
詳細:http://rijfes.jp

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