HINTOを支える伊東真一の“歌う”ギタープレイ そのエフェクティブなサウンド構造とは

 そして、もうひとつの特徴が、ボーカルの歌メロのバックで、それを支えるバッキングに徹するのではなく、別の裏メロを歌うように弾きまくるスタイル。下手をすればメロディー同士が打ち消し合ってしまう危険性もあるが、別のメロディーがときにお互いを引き立て合い、ときに混沌を生んだりと、様々な効果を見事作り出している。例えば、つんのめるようなメインフレーズ(これもかなり「素っ頓狂」)も印象的な「アットホームダンサー」のサビで聴くことのできる裏メロは、楽曲によりポップな印象を与える意味で実に効果的。この曲はAメロでの空間系のエフェクトがかかったコードストロークや、ピンポイントで挿入されるアコギなど、実に多彩なプレイが盛り込まれていて、ギターを聴いているだけでも本当に楽しい一曲だ。また、「シーズナル」のサビで聴くことのできる裏メロは、季節の移ろいを歌うせつない曲調に対して、その音色含め、未来にある光を指し示しているように聴こえ、楽曲に重層的な意味を与えるうえでも外せないパーツとなっている。

HINTO『アットホームダンサー』

 最後に、伊東のプレイスタイルから連想するギタリストを国内外から一人ずつ挙げておくと、まず海外からは伊東自身がフェイバリットだと公言しているフランク・ザッパを挙げておきたい。その変態性に加え、プレイヤーとしての求道的な姿勢という意味でも、伊東に与えた影響は大きいはず。そして、国内のプレイヤーを一人挙げるとすれば、元JUDY AND MARYのTAKUYAだろうか。彼も多彩な音色を駆使するギタリストであり、何より裏メロを弾きまくるタイプのギタリスト。最近のバンドで言えば、KEYTALKの小野武正や、indigo la Endの長田カーティスなどがTAKUYAからの影響を受け、裏メロを弾くスタイルを構築しているようで、今後こういったタイプのプレイヤーは増えてくるかもしれない。そして、フランク・ザッパの変態性と、JUDY AND MARYのポップさというのは、そのままHINTOというバンドの立ち位置をよく表していると言ってもいいように思う。

(文=金子厚武)

■リリース情報
『NERVOUS PARTY』
発売:7月23日(水)
価格:¥2,500(+税)

【収録曲】
1.かなしみアップデイト
2.アットホームダンサー
3.アイノアト
4.テーブル
5.マジックタイム
6.シーズナル
7.エネミー
8.ウォーターランド
9.はんぶんゾンビ
10.ハートレスダンシング・ドゥ

■ライブ情報
『“NERVOUS PARTY” release ONE-MAN TOUR[清楚なふりしてアメージング]』
9月13日(土)大阪LIVE HOUSE Pangea
9月15日(月・祝)福岡・天神the voodoo lounge
9月21日(日)名古屋・池下CLUB UPSET
9月23日(火・祝)渋谷CLUB QUATTRO

前売り3,500円(ドリンク代別) / チケット一般発売日 7月27日(日)

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