Perfumeの新曲『Cling Cling』に見る、「日本らしさ」を超えた海外進出とは?

 いわゆる「クールジャパン」関連の言説にPerfumeがはまらないのはこういったところにも原因があるかもしれない。アルバムタイトルに『JPN』(=JAPAN)という言葉を冠するなど作品の一部に国に関する文脈を挿入することもあるPerfumeだが、その佇まいに関しては一貫して「無国籍」のスタンスを維持している。思えばメジャーデビュー当初の近未来的な世界観にも、最近の「最先端テクノロジーのプラットフォーム」としての立ち位置にも、「日本らしさ」が入り込む余地は存在していなかった。「日の丸ニッポンのコンテンツでプライドを取り戻そう」と鼻息の荒い背広を着た人達と相性が良くないのは当然である。

 Perfumeは自分たちのことを「日本好きコミュニティの人気者」としてではなく、「(日本かどうかは関係なく)誰もが知っている素晴らしいポップアクト」として世界に認めさせようとしているのではないか。“Cling Cling”の楽曲とミュージックビデオからは、そんな意思が透けて見える。

「キュート」「エッジ」を超越する新たなフェーズへ

 Perfumeの過去のアルバムを振り返ると、「キュート」と「エッジ」の双方を行き来しているような傾向が見て取れる。「アイドルがテクノをやる」を推し進めた『GAME』の次にビートをより強調した『⊿(トライアングル)』をリリースし、等身大の女性のしなやかなかわいらしさを表現した『JPN』を経てフロア対応のダンスアルバム『LEVEL3』にたどり着いた。

 この流れで行くと、直近のPerfumeのモードは「キュート」のはずである。実際、今回のシングルの2曲目に収録されている「Hold Your Hand」はサビの切ないメロディが印象的な「キュート」モードのPerfumeらしい1曲だ。一方で、同時収録の「DISPLAY」「いじわるなハロー」はアルバム『LEVEL3』に入っていてもおかしくないポップでハードなダンスナンバーである。そして、「キュート」「エッジ」どちらとも言い切れないような新たな存在感を持った「Cling Cling」がシングルの表題曲となっている。単純に国内での反応だけを考えるならば「Hold Your Hand」主体でプロモーションを行った方が受けはいいのではないかと個人的には思うが、歌番組でも積極的に「Cling Cling」をパフォーマンスしているのにはどんな意図があるのだろうか。

 今のPerfumeは、これまでの「キュート」と「エッジ」を止揚した新たなフェーズにいるのかもしれない。『LEVEL3』が作品としての評価とセールスの双方を獲得し、アルバムコンセプトを具現化したドームライブを成功させたことで、彼女たちは国内のアーティストとして一つの極みに達した。これまでの流れはここでひと段落。ここから始まるのは「日本」も「海外」も関係のない「グローバルスター」としてのPerfumeの軌跡である。本作のリリースを経て行われる全国ツアー、そしてアメリカでのライブを含むワールドツアーで、チームPerfumeは我々にどんな驚きを提示してくれるのか。次のアクションを楽しみに待ちたい。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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