まらしぃが明かす、クリエイターとしての信条「ニコ動に初投稿した時のノリは失いたくない」

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「自分の動画に「残念な天才」っていうタグがついたら、ちょっとニヤニヤしますね」

――まらしぃさんがニコニコ動画に初めて投稿したのは2008年のことですよね。

まらしぃ:そうですね、その年の夏でした。

――その頃のニコニコ動画のコミュニティーってどんなものでした?

まらしぃ:最初はやっぱり、バカをやる場所でしたね。だから今でも「ちょっと弾いたから聴いてよ」みたいな軽いノリ、バカなノリは絶対失いたくないなと思ってるんです。

――そこが大事だ、と。

まらしぃ:そうですね。もちろんCDとして機会をいただいた時は真面目にやりつつも、家で動画を撮って投稿する時は「この曲気に入ったから弾いた」とか「ノリで弾いたから聴いてください」みたいな感じでやりたい。そこは、今後僕がどうなろうとも、絶対失いたくないなと思ってますね。

――でも、まらしぃさんが今立ってる場所はトヨタのCMですよ?(笑)。

まらしぃ:そうですよね(笑)。

――日本を代表する大企業と広告代理店と一緒に仕事をするけど、それでもバカをやる心は失いたくないという。

まらしぃ:はい。なんか……僕自身が今もニコ動の、すごく残念な方向に全力を出してる動画が大好きなんで。今でも毎日そういうのはないのかチェックしてますし、自分が弾いた動画が、僕と同じようにそういうものを探してる人に楽しみにしてもらえるんだったら、それを精一杯やりたいんですよね。

――そういえば、最近出た本で、さやわかさんという方が書いた『一〇年代文化論』っていう本があるんです。そのキーワードがまさに「残念」で。2007年にニコニコ動画が生まれたあたりから、残念っていう言葉がネガティブじゃなくなった、褒め言葉としても捉えられる言葉になったという。

まらしぃ:うん、それはすごくよくわかります。

――渦中にいた人間としてそのことはすごく納得できる?

まらしぃ:そうですね。ニコニコ動画の文化って、動画にタグがつくのが大きいじゃないですか。「演奏してみた」とか、そういうカテゴリーを表す言葉の他に、「残念な天才」ってタグがついたりして。それって、やっぱりすごく言い得て妙なんですよ。その努力を何か別のところに活かせれば何かすごいことがやれたのにもかかわらず、なんでお前はそれに本気を出した?っていう。そんなツッコミを入れたくなる動画が僕は好きで。

――じゃあ、自分の動画に「残念な天才」っていうタグがつくとしたら、それは喜ばしいこと?

まらしぃ:ちょっとニヤニヤしちゃいますね。嬉しいです。

アニソンカバーのコンセプトは「僕が一人で好きなように楽しく」

――ミュージシャン、クリエイターとしてのまらしぃさんについても訊きたいと思うんですけれども。ボカロPとして曲も作るし、バンドを組んだりもするし、「演奏してみた」の界隈の人たちとコラボもやるし、今回のようにソロピアノの作品も作っている。いろいろやられるわけですけど、自分にぴったりくるのは?

まらしぃ:やっぱり、ひとりでピアノを弾くのがたぶん性に合ってそうだなと思います。演奏してみたで声をかけあってコラボやったりとか、けっこうあるじゃないですか。僕、誘われないんですよ(笑)。

――そうなんですか?

まらしぃ:誘われたとしても、それっきり声がかからなくなったりして。羨ましいなと思いながら見てますけれど。でもそれに無理して合わせるより、ひとりで好きな曲を弾いて遊んでるほうが性に合ってるなと思いまして。たぶん集団行動が合ってないんだろうなって思います。

――集団行動が合ってないのはなぜだと思います?

まらしぃ:どうしてなんでしょうね……。ものすごく面倒くさがりだとは思います。仲のいいヤツと出かけたとしても「帰りたいなぁ」って思ったりとか(笑)。カラオケとかでみんなで盛り上がったるときも、どうやって盛り上がったらいいのかがイマイチよくわからなかったりして。自分の部屋でゲームとかしてる時がいちばん幸せなので。

――そういう自分に似合ってる楽器がピアノだった。

まらしぃ:はい。ブランクはありましたけど、ずっとやってたのがピアノですからね。いざ再開してみて、自分の好きなゲーム音楽、アニソン、ボカロの曲を弾いてるのは、やっぱり楽しいですから。なんだかんだ、やっぱり好きなんだなと思って。

――以前に出された『3D-PIANO』『4D-PIANO』のアルバムでは、H ZETT Mさんのような、バンドやJ-POPシーンの第一線で活躍してきた方とコラボレーションもやってましたよね。一緒にやってみて、どうでした?

まらしぃ:やっぱりH ZETT Mさんと初めてスタジオで合わせた時はすごく衝撃的でしたね。僕が普段弾かないような弾き方で、僕がやれないようなことをさらさらとやってしまう。勉強になりました。ピアノの技術的な話も沢山あるんですけど、なにより、H ZETT Mさんは本当に楽しそうに弾くんですよ。「間違えないように」とか「上手く弾いてやろう」みたいな気持ちじゃなくて、やっぱり楽しんで弾いたほうがいいなっていう。そういう心構え的なところでは、自分も一緒にやってから少し変わったとは思います。

――『3D-PIANO』、『4D-PIANO』に続いて、今回は『Anison Piano~marasy animation songs cover on piano~』で、ソロでのアニソンのピアノカバーをやったわけですが。どういうことを意識して作っていきました?

まらしぃ:アニメソングをピアノで演奏するというのは、もともと動画サイトでずっと僕が好きでやってたことで。それを盤として形にさせていただくという機会があったんで、今回は僕が一人で好きなように楽しくっていうコンセプトでやっていきました。みんなが知ってる曲というよりも、僕が選ぶ、僕の好きな曲だけを追求するという。

――まらしぃさんの好きなアニソンの特徴というと?

まらしぃ:わりと最近のものが多いですけれど、僕はやっぱりメロディが綺麗な曲が僕は好きなんです。楽曲として刺さる曲が好きで。

――なるほど。だから、自分でピアノを弾く時にもメロディの良さみたいなものがフィーチャーされるわかりやすいものになる。

まらしぃ:そうなんです。そう言われて自分ですごく納得できました。そんな感じです、はい(笑)。

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