KANA-BOON、キュウソネコカミ、オーラル……関西出身の若手ロックバンドが台頭する背景とは?

「文化的側面として大きいのは、『MINAMI WHEEL』という周遊型のフェスが、地域に根差して発展してきたことが挙げられるでしょう。東京だと『下北沢インディーファンクラブ』(今年は開催が発表されていない)、名古屋だと『SAKAE SP-RING』というフェスが同じ役割を果たしています。ライブハウスが若手を育てるという文化が、近年はその土地や街に根付いたロックフェスとして、一大イベントとなる規模に広がっているということだと思います。こういった流れは世界的な音楽文化の中ではごく普通のことで、アメリカのシカゴで音響系のムーブメントが生まれたり、イギリスのマンチェスターで労働者階級のロックやダンスミュージックが発展したりといった事象があります。最近の日本で海外と同じようにローカルの音楽シーンが活性化してきたのは、周遊型のロックフェスが定着したことの結果なのだと思います」

 さらに同氏は、そういったフェスの構造そのものに、地元バンドがブレイクするきっかけもあるという。

「こういった大きな周遊型フェスの特徴として、『メジャーなバンドが出演する舞台に、地元バンドが出演することによって脚光を浴び、人気者になっていく』という道筋が作られていることも挙げられます。この“周遊型フェスが作るローカリズム”という文化の表象のひとつとして、関西発のノリの良い高速ロックがあるのではないでしょうか」

 現在、そのテンポと同じ様な速さで、ロックシーンの価値観を塗り替えつつある彼ら。その他の地方でも、その土地柄ならではの音楽シーンや、地域性に根差したロックバンドが台頭することを期待したい。

(文=中村拓海)

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