キャンディーズからBABYMETALまで 「アイドルとロック/メタル」の40年史を読み解く

 80年代には、本田美奈子がブライアン・メイ(クイーン)やゲイリー・ムーアの曲を歌ったほか、MINAKO with WILD CATSというガールズ・バンドを結成し、忌野清志郎作曲「あなたと熱帯」(88年)を発表した。また、小泉今日子がKYON2名義で高見沢俊彦作でハード・ロック調の「ハートブレイカー」(85年)を歌った。これらは、山口百恵的なありかたを受け継いでいた。

 アイドルが可愛い面だけではなく、ヤンキー的な顔、強さの一面を見せようとする時、ロック的でハードな曲調が重宝されてきた。

 一方、ヴィジュアルのおどろおどろしさ、サウンドの重さ、極端な速弾き、デス・ヴォイスなど、時代を経るにつれてメタルの過剰さをネタとして楽しむ傾向も出てきた。その過程で山瀬まみ『親指姫』(89年)という傑作も生まれた。これは、普通のアイドル歌手からバラドルにシフトした山瀬が、デーモン小暮、奥田民生などの作曲、筋肉少女帯に在籍した横関敦や三柴理などの演奏でロックを歌った内容だった。なかでも、山瀬まみ作詞の「かわいいルーシー」は飼い犬のうんこを歌った怪作で、アイドルと笑いとハード・ロックのミスマッチが面白いアルバムだった。

 企画ものでメタル要素を活用した成功例では、アニメソングをメタル化したアニメタルのシリーズがあり(97年から)、女性アイドルとの関連では、70年代後半にピンク・レディーで活躍したミーが歌った『アニメタルレディー』(97年)があった。

 以上のように一般的にいって、女性アイドルとロック、メタルの関係は、可愛いだけではない強さの象徴、あるいは、過剰な要素の取り込みに伴うユーモアという二つの面がある。例えば、ももいろクローバーZ「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」におけるマーティ・フリードマンのギター・ソロは、強さとユーモアの両面にまたがった響きに聴こえる。

 武道館公演直前にリリースされたBABYMETAL初のアルバム『BABYMETAL』には、これまでのシングルと3つの新曲が収められていて、やはり強さとユーモアの要素がみられる。「メギツネ」では「なめたらいかんぜよ」と夏目雅子か南野陽子かという強いセリフが飛び出す一方、パパに媚びを売る「おねだり大作戦」にヘヴィなリフが入るミスマッチ感は笑いを誘う。

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