批評家・濱野智史がアイドルプロデューサー宣言! 新グループのコンセプトを明かす

20140214-hamano-01-thumb.jpg
時折「ヲタ芸」の身振りなども交えながら語ってくれた濱野氏。

――なるほど。具体的にはどんな分野との接続を考えていますか。

濱野:たとえば医療介護分野は狙ってみたい。ウェアラブルデバイスを使って、ファンがアイドルの健康を管理したりするんです。だってライブ中のメンバーの心拍数とか、知りたいじゃないですか(笑)「あ、今日は本当に全力で踊ってる」とか数値で可視化されるわけで。逆にアイドルがファンの健康を管理したりするのもいいかもしれない。僕自身もレコーディングダイエットを経験したから分かりますが、ライフログによる自分の健康状態のモニタリングって、すっごい効き目あるんですよ。本当にすぐ痩せる。アイドルの子に体重とか管理されたら、絶対ダイエットできますよ。幸か不幸か、アイドルヲタには不健康そうなひとが多いですし(笑)。ヲタ活を続けるには、健康第一ですよ! いや、これは冗談っぽく言ってますけど、実際この仕掛けがうまく回れば、国家の医療費の削減にだって貢献できるかもしれないわけですよ。日本社会の行く末を考えたら、いつまでも医療費が拡大していくのを放置していくわけにはいかない。そこに一石を投じたいな、と。

 実際、ITはどんどん活用したいですね。言うまでもないことですが、アイドルとSNSなどのツールは相性が抜群で、僕自身もそういったところが専門分野でもあるので、いろんなアイデアをどんどん具現化していきたい。ソーシャルメディアは今後、どんどん非言語的なコミュニケーションの方向へと発達していくはずなので、心拍数や体温、表情や感情といったものを伝えられるようになれば、新しいアイドルのコミュニケーションのあり方も可能になる。またグーグルグラスのようなメガネ型拡張現実デバイスを使えば、東京ドームみたいな大きい箱でもすっごい遠い席にレスを送ったりできるようになる。アイドルとファンの距離をさらに(擬似的に)縮めることができるわけです。いまのアイドルの行き詰まりは物理的な「規模の限界」に起因しているところが大きいので、ITを使えばそれをうまく乗り越えられるかもしれない。

——先ほどの「アイドルの夢の設定」という点においても、他の分野との連携というのはありえそうでしょうか。

濱野:アイドルグループは、教育システムとしても優れていると思うんです。いろんなひとに自分の魅力をアピールしていかなければいけないから、プレゼンテーション能力も磨かれるし、度胸もつく。単純にいろんな人と話す機会が得られますしね。これって学校では絶対に学べないことだし、マクドナルドみたいなマニュアル重視のチェーン店でバイトしてても身に付かない。特にコミュニケーションが重要になるサービス業で働くことが一般的な世の中にあって、アイドルとして過ごす数年はものすごい価値があることだと思うんですよ。

 いま先進国の主力産業はとっくに第三次産業にシフトしていて、少なくとも日本も観光をはじめとするサービス業やクリエイティブ産業にどんどんシフトしている、というかシフトしていくしかないわけです。そういう産業構造の転換期にあって、10代20代アイドルで経験を積むというのはものすごい意義があると思います。そういう発想で、芸能や音楽とは異なるサブシステムと接続したアイドルグループを作れば、おのずと色んな夢が描けますよね。

――アイドルのビジネスとしての可能性はどう捉えていますか。

濱野:これもよく言われることですが、地下アイドルであれば、メンバーと曲さえあればできるわけで、非常にスモールスタートがしやすいビジネスだと思います。下手すりゃ曲はカバーだけっていうグループもあるくらいだから、曲さえいらないのかもしれない。衣装だって、それっぽいのはいくらでも売っている。ひとを集めるだけで新しい職を生み出せているんだから、本当に面白いですよ。実際アイドルは、IT企業のベンチャーとかに感覚が近いなと思います。だから今回のプロジェクトでも、「アイドルグループの作り方」みたいな感じでブログか何かで情報をどんどん発信してまとめていきたいと思っています。

 さらに僕の野望というか夢としては、「レス」に代わる新しい何かが生み出せたらな、と思っています。アイドルグループって、ひとをハマらせるスキームみたいなものがすでに確立されているんですよね。ライブ行って、握手して、そのうち認知してもらって、ライブ中にレスを送ってドーンって高まって、中毒になっていくという感じで。僕自身、認知厨であり接触厨でありレス厨でもあるので、その回路はよく理解しているつもりなのですが(苦笑)、果たしてそのスキームを越えるものは生み出せるのだろうか、という自問があります。さすがにこれはまだ思いつかないんですが、今回のプロジェクトを通じてぜひ模索していきたいですね。後編【みんなが疲弊しないアイドル環境を作りたい】に続く
(取材・文=神谷弘一)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる