坂本龍一が『スコラ』で音楽とメディアの関係を講義「音楽に携わる人間は“録音”から逃げられない」

 音楽を体験しながら学ぶ「スコラ・ワークショップ」では、CDなどのメディアにどうやって音楽が録音されているのかを、オノ セイゲンを迎えて解説。参加したのはヴァイオリンやピアノなどの楽器を習っている4人の高校生だ。2本1組のマイクをピアノの近くや遠く、それぞれ4か所に設置して、坂本が弾いたピアノをオノがその場で録音。その後、ミキシングルームで収録した音をみんなで聴くことに。マイクが設置された場所によって収録した音が違うことを確認したうえで、オノは、良い音を録音するには「反響」と「うねり」を意識することが重要であることを説明した。

 三輪は「今の技術水準でいえば、目隠しテストした時に生演奏か録音が分からなくなってきているので、作り手側はよりメディアを意識しないといけない」と、メディアが発展した現代における音楽家の姿勢について語った。川崎は「ジョン・ケージが『レコードは絵ハガキにすぎない』と言っていたように、録音してしまうと『リアルタイムの創造性』が無くなる」と、メディアと向き合う上での注意点を指摘。さらに三輪は「録音をする前提で音楽を作っていた訳ではないが、コンピューターの登場によって作り方が変わった」と続けた。実際、三輪はそこから影響された手法である「アルゴリズミック・コンポジション」という、「作曲者が定めた一定のルールのもとに、コンピューターなどが自動で音を導き出す手法」を駆使し、2007年に『アルス・エレクトロニカ』のデジタルミュージック部門でグランプリを受賞している。三輪は、コンピューターで作曲したものを人間の手によって演奏させ、それを録音したものを作品としており、そうする理由として「人間が演奏しないと音楽にならないという風に思っているし、そのように人間を信じている」と、その考え方を明かした。そして最後は、坂本の「音楽を作る側、研究する側、教示する側、全ての音楽に携わる人間は録音というものから逃げられない」という、示唆に富んだ言葉で締めくくられた。

 番組の終わりには、最新のテクノロジーを応用した作品で注目されるメディア・アーティストの真鍋大度が登場。人間の体に流れる微弱電流を音に変換させ、さらにその音を微弱電流に変化させ、別の人間の顔に装着。そしてその電流で表情を変化させるという、人と音楽と電子が融合した最先端のパフォーマンスを披露した。

 音楽とメディアの関係について、深く解説した同番組。次回、2月7日の放送では「伝統音楽」について講義する予定だ。
(文=中村拓海)

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