今なぜ「ワン・モア・タイム」? 自動車CMソングにダフト・パンクの有名曲が抜擢されたワケ

 以降のフレンチ・ダンス・ミュージック界は、ED BUNGERレーベルやKITUNEレーベルのようにエレクトロ色が強いものになっていくが、今のダフト・パンクはご存じのとおり、生音ディスコ・サウンドを主軸に置いた楽曲をリリースしている。この方向性は、エレクトロ・サウンド一辺倒ではないという点で、ミーハーな視点で言えば異質なものと見えるかもしれない。だが、実は最初から、過去の音楽に対して敬意を払っているのがダフト・パンクの音楽性だとも言える。

 ダフト・パンク自体が今も変わらず良い意味で回顧的体質であり、ダフト・パンクが新譜を発表したタイミングで懐かしのヒット曲を採用するという、二重の意味でリバイバルしているとも言える「ワン・モア・タイム」の選曲。

 この曲のバックグラウンドに何となく触れていて、曲が流れた瞬間にハッとしたのは、1990年代に青春時代を送って遊んでいた人々のはず。作り手サイドが狙った層にピタリとハマる選曲ということか。そういう意味で、「ワン・モア・タイム」は立派な“大人の音楽”になったのだろう。
(文=真利夫)

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