AKB48、ももクロの楽曲ポイントを亀田誠治が解説 J-POPの新潮流“シークレット転調”とは?

アンジェラ・アキが選ぶ転調の名曲

 アンジェラ・アキは転調が効果的に使用されている名曲として、さだまさしが在籍したグレープの『精霊流し』を紹介。「さださんの歌は“歌詞”を聴かせる歌。そしてこの曲では、歌詞の展開をサポートするように転調が使われているんですね。転調することによって、歌詞を前に進ませているんです」と語った。それを受けて、亀田は「私小説のように綴られている歌詞が、第2章に入っていくような転調ですよね。文学的な感じ」と、補足した。

 続いて、MISIAの『Everything』を紹介。同曲では、D♭からDへ、わずかに半音だけkeyが上がっていることを指摘。亀田は「たった半音だけなのに、こんなに声の表情が違っている。そろそろお腹いっぱいじゃないかというところで半音だけ上がって、MISIAさんの歌のギリギリのところが引き出される」と、転調によって表現が豊かになることを解説した。

 宇多田ヒカルの『First Love』では、転調することによって発声が難しくなるほどキーが高くなり、“極限の歌声”を引き出しているとのこと。その難しい音域を切々と歌いあげることによって、聴き手に共感や感動を与える効果があるそうだ。

J-POPの新潮流! シークレット転調

 近頃のJ-POPでは、上記に当てはまらない、新しい転調のテクニックも使われている。AKB48の『ポニーテールとシュシュ』や、ももいろクローバーZの『行くぜっ!怪盗少女』は、1番のサビからいきなり転調しているが、聴き手が転調に気付かないよう、巧妙に作られている。『ポニーテールとシュシュ』のサビは、AメジャーからG♭メジャーという、かなり大胆な転調が行われているのだが、サビに入る直前、亀田が“バトンのメロディ”と呼ぶ、転調を滑らかにするためのメロディが挿入されているため、一聴すると自然な曲に聴こえてしまうという。

 この場合、転調せずにサビに入ると、本来はかなりの高音域になるのだが、転調によってkeyをぐっと下げてあるので、誰でも楽に歌える楽曲に仕上がる。大人数で元気に歌うには最適の手法で、最近のアイドルソングでよく使われる手法だ。洋楽では転調しない楽曲がほとんどだが、最近のJ-POPでは転調を多用することによって、サビ前の平歌やイントロなどにも、“良メロ”をたくさん仕込むことができるという。

 番組の最後には、亀田がベース、アンジェラ・アキがピアノとボーカルを務めるスペシャル・バンドが「サクラ色」を演奏、転調の効果をより実感できるライブとなった。

 亀田は「ライブで転調した時、顔まで転調していたでしょ? それくらい転調っていうのは、聴き手にとっても、演奏する僕らにとっても気持ちが入る瞬間なんですね。で、アゲアゲなんです。そしてシークレット転調。良いメロディ、キラキラのメロディをいくつも集めて、それをバトンのメロディで繋げていくという。この形は日本のJ-POPの粋です。よそにはない、日本独特の文化です」と結んだ。

 J-POPならではの音楽理論を解説した同番組。次回は10月18日に放送される予定だ。
(文=編集部)

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