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くるり岸田、アジカン後藤、KREVA…「ナナロク世代」がフェスを主催する理由

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 もちろん自らフェスを主催するのは「ナナロク世代」のミュージシャンだけではない。たとえば、90年代末にパンクロックの祭典『AIR JAM』を主催し、長らく続いた休止から2011年と2012年にそれを復活させたHi-STANDARD。たとえば今年15周年を迎えたテクノフェスティバル『WIRE13』のオーガナイザー石野卓球。彼らは現在40代なかばで、「ナナロク世代」から見れば上の世代にあたる。

 それでも、同じく40代後半を迎えた奥田民生(1965年生まれ)、斉藤和義(1966年生まれ)、吉井和哉(1966年生まれ)らのロックミュージシャンらが30代後半だった10年前の活動と、岸田繁や後藤正文ら「ナナロク世代」の今を比べると、そこには如実な違いがあると言っていいだろう。

 その背景にあるのは、音楽カルチャーのここ10年の変化だ。今の日本においては雑誌やTV番組よりもむしろフェスのほうが「音楽カルチャーの見取り図」を示すメディアとしての役割を強く担うようになった。そこにプレイヤーとして参加するだけでなく、自らフェスを主催することでキュレーターとしての役割も果たす、いわば「メディア人」としての才能を持ったミュージシャンが多いのが「ナナロク世代」の特徴なのである。

 特に、洋楽勢を意欲的に出演させてきた『NANO-MUGEN FES.』、細野晴臣や石川さゆりや小田和正などベテランアーティストが出演してきた『京都音楽博覧会』は、ファンに向けて自らのルーツやより豊かな音楽文化を示す意図が明確だ。『908 Festival』も今のヒップホップシーンの見取り図を示すものだし、『京都大作戦』もラウドロックシーンの活性化に大きく寄与してきた。昨年には小泉今日子、近藤真彦から浜崎あゆみ、ゴールデンボンバーまでが出演し、今年はシャ乱Qやhideからももクロマキシマム ザ ホルモンが出演する『氣志團万博』も、ジャンルを超えたスターたちによる化学反応を起こすことを狙ったラインナップだ。

 リリー・フランキー氏が指摘するように(「フェスはただの音楽鑑賞会じゃない」リリー・フランキーが考える“理想のフェス”とは?)、今の日本のフェスというのはいまや単なる「音楽鑑賞会」ではなく、音楽カルチャーの充実や広がりを示すメディア的な機能も担うようになってきた。そこにおいて大きな活躍を見せているのが、彼ら「ナナロク世代」のミュージシャンたちなのである。

 そして、この趨勢は、これからの時代のミュージシャンの「サヴァイヴ術」も暗に示している。飽和する音楽シーンを生き残っていくために、ミュージシャンには音楽家としての才能だけでなく、メディア人としての才能も必要になってきた、ということなのかもしれない。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

      

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