アバンティーズ、決意の再始動 “エイジの日”に送り出した愛しかないドキュメンタリー

 1月1日にメンバーのエイジさんを亡くし、活動を休止していた人気YouTuberグループ・アバンティーズが2月18日、再始動した。四十九日の節目であり、逆から読めば「812(エイジ)」の日となるこの日、「アバンティーズのすべて」と題した動画を公開。1時間を超える映像は、結成から未来図まで、まさにアバンティーズのすべてを語る、濃密なドキュメンタリーだった。

アバンティーズのすべて

 アバンティーズはリーダーのそらちぃ、ツリメ、リクヲ、そしてエイジ(メンバーを同列に記すため、ここからは敬称を省かせていただく)という、1996年生まれの4人からなる、若者のカリスマと言っていいグループだ。検証企画にドッキリ、ドラマに映画、音楽に至るまで、彼らのアイデアは尽きることなく、多くのファンを魅了してきた。そして、その中心にはいつもエイジの姿があった。「AGE OF EIJI」という気の利いた言葉から、動画は始まる。

 冒頭、実家から淡々と自己紹介を続けるツリメ、「緊張するなぁ」と笑顔のリクヲ、「あいつのことだったら、めちゃめちゃ喋れちゃうからね」と自信満々で語るそらちぃ。表情は穏やかで、マイペース。いつものアバンティーズだ。エイジともっとも付き合いの長いツリメが、「保育園で初めて会った日、一緒に泥団子を作った」と、幼き日のふたりが写ったアルバムを見ながら、出会いを振り返る。そらちぃは転校してきた小学校で初めて仲良くなったのがエイジで、毎年クリスマスパーティーをしたという思い出を語った。そしてリクヲは中学時代、「最初はプロレスごっこをして仲良くなった」と笑う。

 エイジは子ども時代から、常識の枠にとらわれない存在だったようだ。ツリメは「4人のなかで、一番クレイジーだったかもしれない」と語るが、そらちぃによれば、中学校が始まって、最初の授業で一人だけ「筆箱が虫かご」で先生に怒られ、二限目の数学では手にボンドを塗ってかたく握り、「僕はドラえもんの気分になっているんです」と言い放ったそうだ。

 中学生時代から仲間たちと動画投稿を始め、動画がバレて校長室に呼び出されて叱られたこと。それでも楽しくて、辞めたくなくて、活動を続けたこと。チャンネル登録者数が増えていくのが嬉しかったことーー東十条に池袋と、上京後の縁の地を案内しながら、多くのエピソードが紡がれていく。

 そらちぃが訪れたのは、エイジとの思い出が詰まった渋谷だ。買い物のあと、ふたりで一緒にタバコを吸った公園。エイジは事故に遭ったサイパンに向かう途中、急に銘柄を変えたという。それを持ち帰り、「吸い切りたくないから大切に吸っている」と語るそらちぃは、かつてのように公園の片隅で一本取り出し、火を点けた。若年層にもファンが多いYouTuberのこと、エイジは動画ではタバコが映らないように、そらちぃにも厳しく注意していたそうだ。

 高校卒業後、そらちぃは大学に進み、エイジは専門学校に通い始めた。生活の違いから、ふたりはぶつかることも増えたという。そらちぃは、思ったことは言葉で伝えるタイプ。一方のエイジは、言葉ではないもので表現して見せるタイプだ。そらちぃは「エイちゃんはめちゃめちゃ才能がある人で、すごい輝いているやつだったから、近くにいると眩しくて、うらやましかった。だからぶつかった部分もあると思う」と、太極図のように対照的なふたりの関係を語っていた。

 そして、2019年1月1日。ひとり日本で大晦日を迎えたツリメは、時差の関係で一足先に年を越したエイジから「カウントダウンしたよ。また日本でね」と電話を受けた。そして元日の午後1時ごろ、そらちぃからの電話で起こされ、「エイちゃんのお母さんの連絡先を教えてほしい」と言われ、直接エイジの実家に向かったという。電波が安定した何度目かの電話で、エイジが亡くなったことを知らされた。電話越しに泣き声が聞こえたが、何が起きているのかわからなかった。

 リクヲは旅先ということもあり、非現実的なシチュエーションで実感がわかなかったという。日本に帰ってきて、ごく最近、「本当にもういないんだ」と実感することが増えたというが、ドッキリでもおかしくない、という感覚もあると語った。

 そしてそらちぃは、真っ先に「エイちゃんが一番好きだったのはYouTubeだし、この4人。絶対にそれをなくしたくない」と思ったという。「あいつのために、立ち止まらない」ーーその決意は、エイジが亡くなって、わずか5時間後のことだった。悲しみ、覚悟、悲しみ、覚悟という連鎖のなかで、そらちぃはいま、「エイちゃんはあれだけすごいやつだったから、俺らがもっともっと大きくなって、いろんな素晴らしい作品を生み出して、あいつを伝説にしてやりたい」と語る。「あいつはもっとスゴいんだよ、ということを知ってほしい。何より、中学校から大好きだったアバンティーズを消したくない。大好きな4人で、前に進みたい」と。

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