w-inds. 橘慶太×Yaffle(小島裕規)対談【後編】 「楽音と楽音じゃない音の境目が曖昧になってる」

橘慶太×小島裕規による“機材トーク”

 3人組ダンスボーカルユニット・w-inds.のメンバーであり、作詞・作曲・プロデュースからレコーディングにも関わるクリエイターとして活躍中の橘慶太がコンポーザー/プロデューサー/トラックメイカーらと「楽曲制作」について語り合う対談連載「composer’s session」。第3回は小袋成彬らと<Tokyo Recordings>を設立し、水曜日のカンパネラ、SIRUP、iriなどのアーティストやCM&映画などへの楽曲提供やアレンジやトラックメイカーとして活動するYaffle(小島裕規)。

 すでに公開されている前編では、両者が楽曲制作で意識していることや、音作りの現場におけるさまざまな“説”に対する疑問などが率直に語られた。後編では制作機材やソフトウェア、細やかなテクニックなどについて、熱く楽しいトークが展開された。(編集部)

「コンピング機能がなくてラッパーがイライラしてくるということが(笑)」(小島)

w-inds. 橘慶太

橘:制作環境についても聞きたいんですけど、家で打ち込むことが多いですか?

小島:そうですね。最近一人作業はほとんど家でやっちゃってますね。

橘:DAWはAbletonなんですよね。

小島:最近Cubaseを買って使ってみたんですけど、せめぎ合いでAbletonに戻ってます。

Yaffle(小島裕規)

橘:Cubaseに変えようと思ったのはなんでなんですか?

小島:普段はPro ToolsとAbletonを併用していて、Abletonはコンピング機能がなかったこともあってCubaseを試してみたんです。橘さんは何を使ってるんですか?

橘:僕はこの間まで、Abletonでトラックを作ってPro Toolsでミックスしていたんですけど、3カ月前にAbletonを脱却しました。

小島:お! どれに絞ったんですか?

橘:もうPro Toolsだけにしました。一番最初にLogicを使ってたので、一回Logicに戻ったんですけど、今はPro Toolsだけ。小島さんはAbletonに不満を感じたんですか?(笑)。

小島:いや、Cubase 10が出た時の宣伝に惹かれて(笑)。ダブリングの縦を合わせる機能が純正で入ってるんですよ。オーディオアライアンスのソースのトラックとダブリングのトラックを指定すると、ダブリングがソースの縦とぴったり合う、っていう機能がすごい便利だなと思って。あとAbletonのサンプラーみたいなのも入ってて。

橘:そうなんだ!

小島:とはいえ、なんでもできる方がいいのか、早くできる方がいいのか、という問題はありますよね。

橘:まぁ、使い慣れはありますよね。新しいものを使うと作業効率が落ちますから。

小島:僕はせっかちなので、もうパパッとやりたいです(笑)。

橘:(笑)。Abletonはサンプラーもいいですし、エフェクトも面白いのがいっぱいありますよね。

小島:UIがフラットデザインだからパッと見でわかるのもいい。細かいことは置いておいて、とりあえずディレイの場所がすぐわかるとか。1回段階を踏まないでいいのが便利です。ただ、先日コライトでヨーロッパに行った時、コンピング機能がなくてラッパーがイライラしてくるということがあって(笑)。「とりあえずお前ループさせとけ、俺が歌うから」みたいな(笑)。そこからだんだん「俺のさっきのテイクどこいったんだ」みたいになって気まずかったです。

橘:トラックを作りながら同時にラップを入れていくってことですね。

小島:そう。作業する時にテンポよく進まないのが向こうの人はイライラしてくるみたいで。海外のトップライナーってLogicを使ってる人が多くて、ラップを歌ってそのまま曲を作るのが当たり前になってるんですよ。

橘:Logicならできますもんね。でも、だいたいできるか。Abletonだけかも。

小島:なんで無いんですかね? 結局使い慣れてるので戻りましたけど。

橘:Studio Oneには興味ないですか?

小島:Cubase発のDAWがあんまり馴染んでないんですよね。使いました?

橘:使いました。Re+Harmonize(リハーモナイズ)って知ってます? サンプルのコードを変えられるんですよ。その機能がすごくて。サンプルってCがCマイナーにならないじゃないですか。

小島:マイナーにもなるんですか?

橘:なるんですよ。

小島:メロダイン的な。

橘:そうです。もちろんやりにくいトラックもあるんですけど。けっこう優秀で面白いなと思って使い始めたものの、Abletonでいうグループの機能がないんですよ。シンセのレイヤーが不便だったのであんまり使ってないんですけどね。

小島:CubaseやStudio One系の、押した時にリージョンになっちゃうDAWって個人的には苦手なんですよね。

橘:このDAWのここ、このDAWのここ、ってセレクトできるDAWを作ってほしい(笑)。

小島:俺だけの最強DAW、欲しいですよね(笑)。

橘:Pro Toolsはどういう時に使うんですか?

小島:エンジニアさんとやりとりする時とか、ボーカルを録ってもらってテイクを自分でやる時ですね。

橘:Pro Toolsでトラックを作ったことは?

小島:昔は作ってました。その時はエレクトロっぽくなる前、生楽器っぽい音が多かった時代ですけどね。

橘:Abletonで録るのはどんなものなんですか?

小島:Abletonで録るのは「トラックメイカーモード」の時ですね(笑)。

橘:トラックメイカーモードの時はAbletonで録音OKなんだ(笑)。

小島:そう(笑)。「プロデューサーモード」でテイク管理をちゃんとする時はPro Tools。「イエー! ドープドープ!」みたいな一本録り感がある時はAbletonです(笑)。

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