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今だから振り返りたい、アイドルゲームの先駆け『中山美穂のトキメキハイスクール』の意義

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 実在するアイドルとの疑似恋愛を楽しむものから、架空のアイドルをプロデュースするものまで、家庭用ゲームにおいても、ソーシャルゲームにおいても、「アイドルゲーム」は一つの大きなジャンルになっている。

 1970年代後半から1980年代にかけて芽生え始めたビデオゲーム市場において、アクションやRPGといったジャンルに留まらずアニメやマンガ等の各種コンテンツと融合し、新たな作品を生み出そうとしていた。その流れがそのまま「アイドル」というモチーフにも適用され、なかにはビデオゲーム史に影響を残す作品も登場した、という歴史がある。

 今回はそんなアイドルゲーム作品から、ファミリーコンピュータのディスクシステム用ソフトとして誕生した『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』(以下『トキメキハイスクール』)を取り上げたい。

女性アイドルと一般人が織りなす学園ラブコメディ

 『トキメキハイスクール』のタイトル名に入っている「中山美穂」はもちろん、80年代後半のアイドル文化形成の中核を為した女性アイドルだ。「ミポリン」の愛称で親しまれ、1985年に放送されたテレビドラマ『毎度おさわがせします』に出演し役者デビューすると、同年6月にリリースした楽曲『C』で歌手デビューも果たす。そのまま同楽曲で第27回日本レコード大賞最優秀新人賞に輝き、「浅香唯」「工藤静香」「南野陽子」らと並んで当時の女性アイドル界隈ブームをけん引した。

 そんな中山美穂を題材に取り上げたゲーム作品が、1987年に任天堂より発売された『トキメキハイスクール』である。パッケージには受話器を耳にあてた中山美穂の写真が大きくプリントされており、一目みるだけでもインパクトの大きさは伝わってくる。

 開発元はスクウェア(現スクウェア・エニックス)で、制作スタッフには『ファイナルファンタジー』を手掛けた坂口博信氏や植松伸夫氏も名を連ねた。基本的なゲーム内容は、コマンド選択式のアドベンチャーとなっており、画面上のウィンドウに表示される「はなす」「みる・しらべる」等のコマンドを使い分けて進めていく。大まかなストーリーは、舞台であるトキメキ学園に転入した主人公(プレイヤー)が同じ学園に通う中山美穂と出会い、一連の騒動に巻き込まれていく、というラブコメディだ。オリジナルキャラクターも多数登場し、シリアスありギャグありの物語が展開する。

アドベンチャーゲームで恋模様を演出する斬新な「表情システム」

 ところで、ファミコン時代における任天堂産のコマンド選択式アドベンチャーと言えば、『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』や『ファミコン探偵倶楽部』が挙げられるが、『トキメキハイスクール』にはこの両作品に見られない「表情システム」が備わっていた。これは文字通り、プレイヤーがゲーム内キャラクターとの会話時に、選択肢と表情を組み合わせるシステムだ。つまり、単純に正解となる会話を選べばOKというわけではなく、同時に発言時に浮かべる表情(笑顔・真顔・しかめっ面など)を正しく選ばなければゲームオーバーになるシビアなシステムでもある。実在するアイドルと一般人である主人公が織りなす、というハードルの高さがある、本作との親和性は高い。

 加えて、同じくタイトル名に「ときめき」がつく恋愛シミュレーションゲームの金字塔『ときめきメモリアル』(コナミ)とは違い、1987年当時は恋愛要素を取り入れたゲーム作品はともかく、男女の恋愛模様をゲーム内のギミックやシステムで表現する家庭用ゲーム作品は皆無に等しかった。恋愛要素を前面に押し出したゲーム作品は、前述した『ときめきメモリアル』シリーズが産声をあげる1990年代あたりからであり、それに先がけて「会話+表情」で簡素ながらもアイドルとの出会いから親密になる様を組み込んだ『トキメキハイスクール』は、一種の意欲作と言える。

リアルとバーチャルがクロスする「電話システム」

 そして中でも特徴的なのが、ゲームを進めると随所で提示される「電話番号」の存在だ。この番号は、直接電話をかけると中山美穂の録音メッセージが聞けるというもので、他愛のない会話のようで攻略に関する情報が含まれている。

 このシステムは『トキメキハイスクール』が開発される前に、スクウェアが企画した「テレホンアドベンチャー」という構想が元になっている。ファミコンでゲームを攻略し、要所で電話から攻略メッセージを直に聞き取るリアルとバーチャルのクロスオーバーが本コンセプトの根幹だ。これに当時話題沸騰中だった中山美穂をミックスし、生まれたのが『トキメキハイスクール』である。ソフト発売から31年が経つ2018年現在、ゲーム内で教わる電話番号は全て廃止されており当時のメッセージテープは確認できないが、「ゲームをプレイしながらアイドルとの電話ごっこも楽しめる」作品があったことに思いを馳せるのも悪くないだろう。

 本作が後発の様々なアイドルゲーム作品が生まれるきっかけとなったのは想像に容易い。その内容は、玉石混合のゲーム作品が溢れた当時のゲーム事情を考察するだけでなく、バブルに湧く日本の好況や昭和末期のアイドル文化を再確認するためにも役立つはずだ。機会があればぜひ手にとって遊んでもらいたい名作である。

■龍田優貴
ゲームの尻を追いかけまわすフリーライター。時代やテクノロジーと共に移り変わるゲームカルチャーに目が無い好事家。『アプリゲット』『財経新聞』などで執筆。個人的なオールタイムベストゲームは「ファミコン探偵倶楽部」シリーズ。
Twitter:@yuki_365bit

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