>  >  >  >  > 多くのアイドルが見習うべき、私立恵比寿中学の巧みなプロダクション
PR

多くのアイドルが見習うべき、私立恵比寿中学の巧みなプロダクション

中人(初回生産限定盤A)(DVD付) / 私立恵比寿中学

2016.07.29
評価:

 「私立恵比寿中学」という珍妙なグループ名を聞いて、ただのよく分からないアイドルグループのひとつだと受け止められるのは非常に困る。9人ものメンバーが在籍する大所帯だが、声・性格共にひとりひとりが明確なキャラクターを持ち、音楽性においても魅力的でぶっ飛んだ楽曲を量産する、今最も目が離せないグループだ。一度聴けば忘れない強烈なアニメ声とドスの効いた力強い歌声を使い分ける廣田あいか、演劇がかったセリフを言わせればグループ随一の元気少女・真山りか、まるでOl'Dirty Bastardのような飛び道具的な声を操る安本彩花、正統派美少女的な風貌となんとなくヤル気のなさそうな歌声とのギャップが魅力の鈴木裕乃など、メンバー全員が元から秀でた力を持っていた訳ではないが(数年前に観たライブはヒドかった)、踏んだ場数と成長期における飲み込みの速さで、今や強烈な個性派集団と化している。ヒップホップで例えるならば、アイドル界のWU-TANG CLANだ。

 そんな彼女たちのメジャー1stアルバムは、タイトル通り、子供でも大人でもない不安定な9人の中人が紡ぐ、大人になる手前の一瞬の輝きを抽出した汗と涙と笑いの青春絵巻。全17曲70分以上という大作だが、聴き疲れることはない。理由として挙げられるのは、作品中にひとつも似た傾向の曲がないこと。そして、ハワイアン、パンク、ソウルなど、ありとあらゆるジャンルを取り入れつつも、大部分の曲は敢えて本格的な仕上がりにはせず、歌詞や歌い方などで少しだけ崩す。この作品に限った話ではなく、エビ中の楽曲ではこうしたギミックが効果的に使われている。さらに、メンバーの声質やキャラクターを生かした細かい歌割りも面白い。歌の上手い下手ではなく、魅力的に「鳴っている」テイクを丁寧に採用している。これは、制作陣が各メンバーの魅力をしっかり把握しているからこそだろう。お見事というほかない。

今作を聴いていて胸に浮かぶのは、彼女たちの青春を追体験しているような感覚だ。お馬鹿で無邪気で少しだけ背伸びをした、この年頃ならではの等身大な歌詞は、他のどのアイドルにも歌えない、エビ中だけのもの。青春時代は一瞬で過ぎ去ることを大人は誰もが知っている。だからこそ、彼女たち9人の「中学生」が放つ青春の輝きに心を掴まれるのだ。

強烈な個性をもつ作品ゆえ、万人に勧められるとは思わないけど、ポップスを愛する人にはぜひ聴いてもらいたい。個人的には年間トップ3レベルのアイドルポップ名盤だ。

■阿刀 "DA" 大志
75年生まれ。某パンクレーベルにて宣伝制作を10年以上務めた後、昨年フリーランスに。現在は執筆業を中心に、Space Shower TVの番組スタッフやら何やら音楽に関わるあらゆる分野で雑食的に活動中。9月からは某音楽専門学校の講師を務める予定。

中人(初回生産限定盤A)(DVD付)

私立恵比寿中学の待望のメジャー1stフルアルバムは、まさに“キングオブ学芸会"を体現する仕上がり。サウンドプロデューサーは、たむらぱん、石井竜也+シライシ紗トリ、さつき が てんこもり、杉山勝彦など。

中人(初回生産限定盤A)(DVD付)

【このレビューをシェアする】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【関連タグ】
私立恵比寿中学
ももいろクローバーZ
J-POP
アイドル
阿刀 "DA" 大志

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版