『ちむどんどん』前田公輝&飯豊まりえ、“恋敵”が善人な理由 物語を読み解く鍵は賢秀か

『ちむどんどん』恋敵が善人である理由

 賢秀の失態をいつも家族が肩代わりしていて、今回の房子のワインも暢子が「一生かかっても償います」と謝るハメに。リアルに考えると希少な高価なワインを何本も空けたら弁償にいくらかかるのか気が遠くなるが『ちむどんどん』の世界では金額はファンタジーの領域だ。いや、ワインの価値とは何か。なぜそれが高価なのか。アートと同じで、誰かにとって一文の価値のないものが、誰かにとっては何億もの価値になることがある。それと同じで誰かにとって悪や不正や変なことでも誰かにとってはそうではないことが世の中にはたくさんあるのではないか。賢秀の存在はそれを問いかけてくる。

 ドラマから離れると、現実の世界ではいま参院選を前に選挙運動が行われている。選挙の時期におなじみなのは泡沫候補である。ちょっと変わった言動で目立つが多くの支持を得ることはない。にもかかわらず彼らは立候補し変わった言動をし続ける。「NHKをぶっ潰す」というスローガンをNHKが流している様はシュールである。多様性を大事にすることは、あらゆる存在を認めることである。一方的な判断をしないことである。昔からの決まりでも、大多数がおかしいと思うことでも、ひとりでも違う道をいこうとするならその考えは尊重されるべきなのだ。

 だから、賢秀がお金にルーズであっても、智が暢子の気持ちをお構いなしに結婚する気で他者に勝手に話をしてしまっても、和彦がこれまで何も疑問を感じずに愛と付き合っていたにもかかわらず突如暢子が気にかかってしまっても、それを間違っていると決めつけていい者はひとりもいないのである。ことの良し悪しを決めてしまうことのほうが楽だ。決めないことは困難を伴うが大切なトライである。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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