ディズニーにとっては因果応報? 『ラーヤと龍の王国』の悲劇

ディズニー『ラーヤと龍の王国』の悲劇

 先週末の動員ランキングは、3月8日に超イレギュラーな月曜公開となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が週末まで引き続き好調で、土日2日間の動員76万1000人、興収11億7700万円を記録して初登場1位となった。初日から7日間の累計は動員219万4533人、興収33億3842万2400円。最終興収53億円を記録したシリーズ前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のオープニング7日間との比較では動員133.6%、興収145.1%という数字だ。もちろん大ヒットは大ヒットなのだが、このままロングヒットの気流に乗るかどうかは、21日までと言われている首都圏1都3県の緊急事態宣言解除の影響、春休み興行による上増し及びその対抗馬など、複数の要素が複雑に絡んでくるだろう。

 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に関しては、現状、どのメディアも企画書と原稿チェックなしでは作品のメインビジュアルを借りることもできず(この問題についても改めて取り上げる予定だ)、写真ナシの回が当コラムで続くことを避けたいこともあり、今回は3月5日に公開されて、前週の動員ランキングで6位に初登場、先週末は7位となった『ラーヤと龍の王国』の興行について触れたい。ディズニーの最新アニメーション作品が、オープニング3日間の成績が動員5万5395人&興収7027万7600円、10日間でも動員12万2178人&興収1億5381万750円という低水準の成績に落ち込んでいるのは興行的な大事件だ。

 『ラーヤと龍の王国』の初週の公開スクリーン数は244スクリーン。そこには、TOHOシネマズ、MOVIX、ティ・ジョイ、109シネマズなどの大手シネコンチェーンは含まれていない。その背景には、ウォルト・ディズニー・ジャパンと日本の映画興行団体、全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)との間での話し合いや駆け引きがあったとされている。時系列に沿って説明をすると、次のようになる。

・ウォルト・ディズニー・ジャパンは2020年4月17日に劇場公開予定だった『ムーラン』を、度重なる公開延期を経て、9月4日に自社のストリーミング・サービス、ディズニープラスを通じてプレミアアクセス料金(3278円)で独占公開。

・ウォルト・ディズニー・ジャパンは2020年12月11日に劇場公開予定だった『ソウルフル・ワールド』を、12月25日にディズニープラスを通じて通常のサービス内で独占公開。

・全興連は2021年1月21日に弁護士を通じて「これまで通りの形式で劇場公開をしない作品については、団体に加盟する映画館では上映しない」という趣旨の文書をウォルト・ディズニー・ジャパンに送付。

・ウォルト・ディズニー・ジャパンは2021年3月12日に劇場公開予定だった『ラーヤと龍の王国』の公開を急遽1週前倒しにして、劇場公開と同時にディズニープラスを通じてプレミアアクセス料金で公開することを決定。

 こうして事実を並べていくだけで、「そりゃモメるわ」と誰もが思うだろう。大前提として、コロナウイルスのパンデミックという歴史的かつ世界的な大災禍があり、ちょうどそれがディズニーが社運を賭けた新サービスであるディズニープラスのローンチ時期に重なったわけだが、結果的に日本の映画興行や映画宣伝の現場に多くの混乱を巻き起こすこととなった。

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