「トップ10に実写外国映画はゼロ」「10作中7作がアニメ作品」の異常事態

「トップ10に実写外国映画ゼロ」の異常事態

 5週連続1位の『鬼滅の刃』は、週末成績で前週比86%とようやく勢いが少しだけ落ちてきた。それでも土日2日間の動員は114万7000人、興収は15億2200万円と、2位に初登場した『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』に11倍以上の差をつけていて、今週末にはいよいよ歴代興収4位の『君の名は。』(250.3億円)と歴代興収3位『アナと雪の女王』(255億円)を抜いて歴代興収のトップ3に入る見込みだ。

 2週前のコラム(参考:来春までハリウッド映画は公開されない!? 本国で『ナイル殺人事件』『フリー・ガイ』の公開延期が発表)で予告した「トップ10すべてが日本映画となる」という状況に、着々と近づいてきた。先週末の動員ランキングのトップ10に実写外国映画はゼロ。かろうじて8位に『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』(中国製作)、10位に『パウ・パトロール カーレース大作戦 GO! GO!』(アメリカ製作)と2作の海外アニメ作品が入っているが、1位と2位以下の作品の興収が大きく乖離している現在、それらの作品の興収は通常ならトップ10に入る水準ではない。また、注目すべきはトップ10の中の7作品がアニメ作品であるということ。自国映画のシェアが高く、アニメ作品が強いというのは平時においても日本の映画興行の特徴だが、非常事態下(今年3月以降、映画興行的には「非常事態」がずっと続いていると言っていいだろう)においてその傾向がグロテスクなまでに顕著になってきたかたちだ。

 2010年に創刊されてから現在まで、自分は10年以上にわたって女性誌『GLOW』で映画ページを担当している。作品のセレクトについては100%任されていて、何の忖度もなくそのタイミングで公開されるオススメの作品を雑誌の読者層も意識しつつ選んできたのだが、このところ『TENET テネット』『ザ・ハント』『ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢』と実写外国映画、特にハリウッド映画を取り上げるようにしている。『TENET テネット』はご存知のようにワーナーがクリストファー・ノーランの意思を尊重してこの秋に公開を強行した唯一のブロックバスター作品。『ザ・ハント』はパンデミックが深刻化する直前の3月13日に全米公開されたユニバーサル(日本での配給は東宝東和。公開中)のスリラー作品で、公開の翌週には多くの劇場が閉鎖してしまった。『ネクスト・ドリーム』は5月8日に全米公開される予定だったが、劇場閉鎖が続いていために北米ではストリーミングでの公開となったラブコメ作品(日本での配給は東宝東和。12月11日公開)。いずれも、パンデミック拡大による不運に見舞われてしまった作品だ。

 もちろん、いずれもオススメの作品であったわけだが、正直、どの作品を紹介しようか迷った時に「外国の実写映画」を優先するというバイアスを働かせているのは事実だ。何故なら、アメリカのメジャースタジオのどこの経営が傾いて、どこが吸収合併されて、どの部門が再編されていくのかも心配ではあるが、それ以前に日本の外国映画の配給会社や宣伝会社がこれまでのように存続できるかどうかがまったくわからない状況だからだ。

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