野木亜紀子作品は“副題”にも注目! 『MIU404』第1話と第2話でまったく色合いの違う物語に

『MIU404』は“副題”にも要注目!

 ついに『MIU404』(TBS系)が始まった。綾野剛、星野源主演。さらには脚本に野木亜紀子、演出に塚原あゆ子、プロデュースに新井順子という最強『アンナチュラル』(TBS系)タッグという完璧な布陣からして、放送決定当初から期待せずにはいられなかった。だが、この数ヶ月間の「待ち」の時間を得てしても、その期待を大きく上回る面白さだった。

『あぶデカ』を踏襲しながら現代的な刑事ドラマに

 謎に満ちたタイトル『MIU404』のMIUとは機動捜査隊の頭文字をとった略称である。主人公たちの仕事は、町中で勃発する各事案に対し、24時間できうる限り対処するが、行うのは初動捜査のみで、継続捜査は専門の課に引き継ぐようになっている。彼らの特殊な勤務形態がうまくドラマの特性とマッチし、とてもスタイリッシュな作りになっているのも興味深い。だが何より、これまでのバディものを踏襲しつつ、新しくもある、綾野と星野演じる伊吹と志摩の組み合わせの面白さである。「あおり運転」という社会問題を取り上げつつ、近年のテレビドラマでは久しく見なかったド派手なカーチェイスで盛り上げたスピード感溢れる第1話は、彼らバディの証明だった。

 常にクールだが、いざという時は車を大破させてしまうほどの爆発力も見せる星野演じる志摩、そして、足が速く、常に砕けたしゃべり方、さらには情に脆い綾野演じる伊吹。彼らのキャラクターに、舘ひろしと柴田恭兵が演じた伝説的バディ、『あぶない刑事』の鷹山と大下を重ねずにはいられない。

 『あぶない刑事』と重なる理由はまだある。第1話の「激突」という2文字の副題である。2文字の副題といえば、『あぶない刑事』のテレビシリーズの副題は2文字で統一されており、もっと言えば『あぶない刑事』版「激突」(第10話)は、奇しくも銃撃戦メインの回だったりする。「銭形警部とかあぶない刑事とか憧れなかった? ほらバンバン撃つのとかさ」という伊吹に対し、志摩が「現実の刑事の9割が引退まで拳銃を抜かない」と答え、伊吹が拳銃で犯人を脅すふりをすることによって2人の信頼関係が揺れる終盤の展開も含め、伝説的刑事ドラマの性質をしっかり踏襲しつつ、より現実に即した現代的な刑事ドラマであることを第1話において、このドラマはしっかりと宣言した。

「切なる願い」が集結した第2話

 打って変わって第2話の副題は、2文字ではなく5文字の「切なる願い」。第1話最後の「誰かが最悪の事態になる前に止めてあげることができる、超いい仕事じゃん」という伊吹の言葉を裏切るように、第2話で描かれたのは、「最悪の事態」になってしまったことを認められずに「動く人質監禁立てこもり事件」を起こしながら疾走する松下洸平演じる犯人の哀しき物語だった。

 第1話で疾走しまくった物語は、第2話では逆に、伊吹の疾走シーンは少なめ、2人を乗せたメロンパン号はノロノロと走り、ロードムービーのように比較的ゆっくりと進む。まるで、時間を巻き戻したい、つかの間訪れた幸せな時間を、あともう少しだけでいいから引き伸ばしたいという登場人物たちの切なる願いを聞き入れるように。

 『24時間ノンストップ「機捜」エンターテインメント』という物語の性質上、進み続けなければいけない時間軸の中で、時間と命の不可逆性を知りながらも、かつて息子を失った田辺夫婦(鶴見辰吾、池津祥子)は、「息子が自殺する前に戻れるなら」と願い、咄嗟に上司を殺してしまった犯人・加々見(松下洸平)は、「罪を犯す前に戻りたい」と願う。そんな哀しい3人が、人質と犯人として出会うことで、思わぬ疑似家族ができあがっていく。それぞれが息子に重ね、父に重ねて起きた喜劇と悲劇、「今度こそ信じる」という思いが皮肉な結果を生みかねなかったスリリングな展開、幾重にも散りばめられたすれ違いの一致が、実に美しく物語を彩る。

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