戸田恵梨香が私たちに灯した炎 『スカーレット』最終週が描いた“特別な1日”

『スカーレット』戸田恵梨香が我々に灯した炎

 『スカーレット』(NHK総合)最終週「炎は消えない」で描かれたのは、それぞれの幸せのカタチ、そしていつもと変わらない1日だった。

 タイトルバックをラストに持ってくるという特別な演出もなく、いつも通り始まった第150回。武志(伊藤健太郎)の白血病の症状は、味覚障害、脱毛と目に見えて進行しているのが明らかであったが、それらを打ち消すほどの充実した輝く毎日が最終週では映し出されていった。

 刻一刻と迫る死を前に、武志がワークショップ「今日が私の1日なら」で書いた「いつもと変わらない1日は特別な1日」という言葉。幸せとは私たちが当たり前に吸っている空気のように目に見えづらく、人それぞれに幸せのカタチがあるからこそ言葉にもしづらい。「幸せ」とパッとインターネットで検索して出る答えは、「幸福であること」「心が満ち足りていること」となんとも抽象的だ。

 喜美子(戸田恵梨香)と武志にとっての幸せ。それは、抱きしめたくなるほどに愛おしい互いの存在だ。第1回で登場したびわ湖が最終回では再び登場しているが、喜美子の武志への“ギュ~”も第103回以来。八郎(松下洸平)が家を出て行ったその意味をまだ理解していない武志に、大好きという思いを伝えるため、喜美子自身の気持ちを慰めるための“ギュ~”だった。最終回では、作陶をする穏やかな日常の中での“ギュ~”。

 最終週において、武志の病状は細かく伝えられることはなく、この喜美子と抱き合う親子のシーンが、武志にとって最後の姿となる。脚本によっては、最終章にて武志が白血病と必死に闘う壮絶な姿を描くこともできただろう。けれど、『スカーレット』が伝えたのは目の前に横たわる死の未来ではなく、目の前にある見えづらい“生きる”ということだった。

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